既報では、東南アジア諸国連合(ASEAN)の10か国における商標制度の近況として、マドリッド協定議定書(マドプロ)への加盟状況等を紹介しました。特許制度の近況については、ASEAN加盟国での発効が近年相次いだマドプロに比べると、特許協力条約(PCT)の加盟は以前から進んでおり、2016年12月8日にカンボジアで発効したことで、PCT未加盟のASEAN加盟国は、2018年5月末時点で特許法未制定のミャンマーのみとなっています。

そのようなASEAN加盟国の特許制度に関してしばしば話題となるのが、一部の国における審査の遅延や実体審査に関する選択肢の複雑さです。審査の遅延を示す資料としては、日本特許庁(例えば、こちらの報告書(PDF))およびジェトロ(例えば、こちら(PDF)こちら(PDF)のセミナー開催報告)、新興国等知財情報データバンクから公表されている報告書、記事等があり、特に遅れが目立つタイでは出願から登録まで平均10年程度(2008-2015年の調査期間におけるデータ)との報告もあることから、早期権利化の手段を検討すべき場面が想定されます。

下表は、特許審査ハイウェイ(PPH)、ASEAN特許審査協力(ASPEC)プログラム等のASEAN加盟国における早期権利化手段と審査に関するその他のオプションを示したものです。

<表:ASEAN加盟国における早期権利化手段等>

早期審査 PPH PCT-PPH ASPEC その他のオプション
シンガポール × 補充審査(※2020年1月1日で廃止予定
インドネシア ×
タイ × 修正実体審査
マレーシア × 修正実体審査
ベトナム × × 対応出願の審査結果利用
フィリピン 対応出願の審査結果利用
ブルネイ × PPHプラス × 対応出願の審査結果利用
カンボジア × × × CPG(日本)認証(欧州)
再登録(シンガポール、中国(英語中国語))、
対応出願の審査結果利用(シンガポール
ラオス × × ×  CPG(日本)
対応出願の審査結果利用(中国(英語中国語)*)
ミャンマー (2018年5月現在、特許法未制定)
  • 名称は類型を示すための便宜上のものであり、同一の名称で表記していても国によって運用の詳細には相違があります
  • 表中のリンク先は、日本特許庁、中国国家知識産権局、新興国等知財情報データバンク及び弊所ウェブサイトの関連記事です
  • ラオスの「対応出願の審査結果利用」については、2018年4月の発表時点で運用の詳細は公表されていない模様です
  • 国名からリンクされている記事は、新興国等知財情報データバンクで提供されている日本の特許審査請求期限との比較に関するものです

2018年8月に公表の季刊創英ヴォイス(vol.83 SOEI-VOICE)の「特許出願の早期権利化手段と審査の国際的な取り組みについて」では、ASEAN以外における特許審査ハイウェイ(PPH)等の早期権利化手段も紹介していますので、ぜひご覧ください。

【出典】
日本特許庁「外国知的財産制度に関する調査研究報告
日本貿易振興機構(ジェトロ)「ASEAN:知的財産に関する情報
工業所有権情報・研修館(INPIT)「新興国等知財情報データバンク
日本特許庁「特許審査ハイウェイについて
日本特許庁「途上国との審査協力
中国国家知識産権局「News: Official InformationIPR Special
中国国家知識産権局「知识产权工作

【参考】
日本特許庁「PCT加盟国一覧表
独立行政法人国際協力機構(JICA)「海外の現地情報ミャンマーにおける知財制度の現状と法案の概要(PDF/483KB)」※関連記事の公表時期以降(2016年4月以降)である2018年3月29日に作成された資料

 

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季刊創英ヴォイス
vol. 75 知財情報戦略室:国内外の特許出願における早期審査制度の活用 2015-12-01
vol. 83 知財情報戦略室:特許出願の早期権利化手段と審査の国際的な取り組みについて 2018-08-01

※この記事は一般的な情報、執筆者個人の見解等の提供を目的とするものであり、創英国際特許法律事務所としての法的アドバイス又は公式見解ではありません。