1 はじめに
製品等を販売する際に、その取引条件が独占禁止法に違反しないか検討することは重要である。今回は、「抱き合わせ販売」について焦点を当てる。

2 「抱き合わせ販売」の概要
複数の商品を組み合わせて提供すること自体は直ちに独占禁止法上問題となるものではない。しかし、当該事業者のある商品の市場における地位等によっては、他の商品の市場における既存の競争者の事業活動を阻害する等のおそれがある。

公正取引委員会が運用基準として示している「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」によると、「主たる商品の市場における有力な事業者が、取引の相手方に対し、当該商品の供給に併せて従たる商品を購入させることによって、従たる商品の市場において市場閉鎖効果が生じる場合には、不公正な取引方法に該当し、違法となる(一般指定10項(抱き合わせ販売等))」としている。

3 事例紹介
公正取引委員会は、独占禁止法に関して相談事例とその回答について公表している。以下では、「抱き合わせ販売」に関 連する相談事例を編集・簡略化してご紹介する。

事例紹介「抱き合わせ販売」

(相談事例要旨)
A社は、バイオ検査機器、検査試薬などの製造・販売等を行うメーカーである。通常、検査機器メーカーは、検査機器については企業等にリースし、検査試薬については別途販売している。A社は、検査試薬の売上の安定化を確保するため、X分野において検査機器と検査試薬を合わせて販売することを検討している。具体的には、企業等が検査機器を購入する場合に要する費用と、その検査機器の稼動期間に想定される検査試薬の総費用を合わせた金額を、当該稼動期間に想定される検査回数で割ることで、検査項目毎の検査1回当たりの料金を設定する。実際の請求は、企業等が一定期間に行った検査回数に当該検査1回当たりの料金を乗じた額を、利用料として請求する(以下「新方式」という)。このような新方式の取引方法が独占禁止法上問題とならないかという事案。

なお、X分野については、検査機器はA社が自社で製造して いるが、これに使用できる検査試薬はA社製のものに限られず、複数メーカーの検査試薬が使用可能である。X分野におけるA社の国内シェアは、検査機器では40%、検査試薬では20%であり、順位はいずれも2位である。

また、A社は、企業等からの申し出があれば、検査機器や検査試薬を別途個別に販売するとしている。

(回答の要旨)
「A社が検査機器に組み合わせて供給するのは、検査において使用する検査試薬であることから、企業等に対して不当に不利益を課すものとは認められない

「他方、・・・A社の市場での地位を鑑みれば、他の検査試薬メーカーはA社の検査機器を使用する企業等との取引から排除され、公正な競争が阻害されるおそれが強い。」

「しかしながら、・・・A社は、企業等からの申し出があれば、検査機器や検査試薬を別途個別に販売することとしており、 企業等は取引条件等を勘案の上検査試薬を選択し、他のメーカーから購入することも可能である。」

「したがって、本件新方式の取引方法が、公正な競争を阻害するとまでは認められない。」

「ただし、本件新方式における取引条件を、別途個別の取引を行った場合と比べて著しく有利とするなど、事実上本件新方式以外の取引方法を選択することが妨げられる場合には、 この限りではない。」としている。

4 まとめ
本件では、A社が、企業等の申し出があれば検査機器と検査試薬を個別に販売することにしている点がポイントであると考える。企業等は、A社を含め複数メーカーの検査試薬の中から自由に購入することができるため、検査試薬の市場に不当な影響を与える可能性が低いからである。

もっとも、検査試薬の取引条件が、個別取引よりも検査機器と組み合わせて購入する場合の方が著しく有利など、事実上企業等が検査試薬の個別取引を選択する余地がないような場合には、公正な競争を阻害するとして不公正な取引方法に該当するおそれがある。

したがって、複数の商品を組み合わせて販売する場合には、その取引条件の設定に関して注意する必要がある。

【出典】
公正取引委員会
流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針
相談事例集:(平成17 年度)3 バイオ検査機器メーカーによる検査機器と検査試薬のセット販売

※この記事は一般的な情報、執筆者個人の見解等の提供を目的とするものであり、創英国際特許法律事務所としての法的アドバイス又は公式見解ではありません。