Doceram v. CeramTech (Court of Justice of the European Union 2018) No. C-395/16

欧州共同体意匠理事会規則には、「共同体意匠の保護は、単に技術的機能によって決定付けられる製品外観の特徴には存在しないものとする。」とする規定がある(8条(1))。

欧州連合司法裁判所(CJEU)は、標記事件において、この「単に技術的機能によって決定付けられる」という事項についての判断基準を判示した。

事件では、Doceram社が自社の意匠権に基づいてCeramTech社に対し侵害訴訟を提起し、これに対しCeramTech社が上記8条(1)に基づいて意匠の無効請求を行った。登録意匠はセンタリングピンに係るものである(登録242730-0001号等及び下図参照)。侵害訴訟を審理していたドイツ・デュッセルドルフ高裁は、審理を中断し、8条(1)適用の判断手法についてCJEUに付託したものである。

登録242730-0001号(図面)

この条文の解釈については、従来は「同じ機能を発揮するための代替的形態が存在するか」が判断基準となると言われ、EUIPOの無効部の決定にはそのような判断基準を示したものがいくつかあった。代替的形態が存在する場合は、単に技術的機能によって決定付けられる意匠には該当せず、したがって、8条(1)の適用はない。しかし、今回の判決は、このような判断基準を採用せず、以下のように判示した。

  • 代替的形態の有無が最終的な判断基準ではなく、技術的機能が意匠の特徴を決定づける唯一の要素であるか否か、が判断基準となる。
  • 技術的機能が意匠の特徴を決定づける唯一の要素であるか否かを判断するためには、個別事案における全ての客観的事情を考慮しなければならず、欧州共同体意匠理事会規則に規定されていない「客観的な観察者(objective observer)」なる人の観点から判断する必要はない。

非常に曖昧な表現であるが、判決では、この客観的事情の中には、代替的形態の有無も含まれるとしている。これまでは、代替的形態が存在しているだけで8条(1)の適用はないとされ、その結果、8条(1)に基づく無効が成立する可能性は極めて低かったが、今後は、8条(1)の適用の機会が増える可能性がある。ただし、どのような証拠を提示すべきか等、より詳細なプラクティスは不明であり、これからの裁判事例を注視していく必要がある。

ちなみに、日本意匠法では、5条3号に同様の規定が存在する。しかしながら、これまで全くと言っていいほど問題となったことはない(出典(2)の8ページ「(参考5)2017年度の拒絶理由通知内訳」(PDF)参照)。機能的な特徴が表れた物品の形態を広く保護してきた点は日本意匠実務の特徴であり、欧州意匠実務とは異なる部分である。

【出典】
(1)日本特許庁「諸外国の法令・条約等意匠理事会規則 第8条(仮訳)(PDF)」
(2)日本特許庁「産業構造審議会知的財産分科会意匠制度小委員会 第12回意匠審査基準ワーキンググループ資料4 創作の実態を踏まえた意匠の適切な開示要件の在り方(案)(PDF)」

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