In re: Ron Maatita (Fed. Cir. 2017) No. 2017-2037

連邦巡回控訴裁判所(CAFC)は、2018年8月20日に、立体的形状を備えた意匠に関し、1図(plan view;平面図)のみの提出で図面の開示要件(明確性・実施可能要件=米国特許法(35 U.S.C.) 112条)を満たしうる旨の判決を行った。

問題となった米国意匠出願は「靴底」にかかる出願であり、その一部をクレームする部分意匠の出願だった。そして、下記のように、本出願には、靴底方向から見た1図しか含まれていなかった。
(実際は2図含んでいたが、2図目は破線部を変えた変形例であり、やはり靴底方向から見た平面図だった。)

In re Maatita_図面

そして、米国特許商標庁(USPTO)は、本出願を112条違反であるとして拒絶したが、本事件は、これを不服として出願人が上訴したものである。CAFCは、判決の中で、上記図面に表れた靴底が立体物であり、凹凸は様々な態様が取り得ることを認定しながらも、「この意匠は2次元的な平面図から理解し得る」ため、112条違反ではないと判断した。

その判断基準としては、『当業者(one skilled in the art)が、通常の観察者(ordinary observer)の視点から、合理的な確かさ(reasonable certainty)をもって、クレームと図面に基づいて、意匠の権利範囲を理解できないとき』に112条が適用されるとしている。CAFCは、過去の判決例を紐解き、「意匠における112条違反は、図面の不一致や図面とクレーム文言の不一致の場合に生じるものとされており、本件は、図面等の不一致の問題ではないこと」や「意匠における112条は、競業他者に意匠権の権利内容を十分に知らせるためのものであり、意匠権侵害の成否に関連する目的を有しているとされている」ことから、上記基準を導き出したものである。

この判決からは、広い権利を取るためには1図のみで出願して立体形状をディスクレームすべきようにも思える。しかし、判決では、ラグなどの平面的な物品については1図のみの出願が認められるべきであるが、靴の全体の意匠の場合には、1図のみでは適切ではない旨も言及しており、注意が必要である。判断基準も、「当業者」という仮想の人が、「通常の観察者」という別の仮想の人の立場で判断するものとされており、まだまだ不明確な点が多い。ある程度平面的である意匠については1図のみの出願が認められそうだが、実務上では、立体物については6面図を提出することを依然として基本とし、1図のみの出願にチャレンジする場合は継続出願を行う等の手当てをした方が良さそうだ。

【参考】
日本特許庁「諸外国の法令・条約等特許法112条(PDF)、特許規則1.152 意匠図面(PDF)」

米国特許商標庁「Manual of Patent Examining Procedure (MPEP): 1503.02 Drawing I. VIEWS」
米国特許商標庁「Design Patent Application Guide: Drawings or Black and White Photographs」※このガイドでは、特許規則(37 CFR)1.152を一部引用した下記の言及がある

To meet the requirements of 35 U.S.C. 112, the drawings or photographs must include a sufficient number of views to constitute a complete disclosure of the appearance of the design claimed.
(35 USC 112条の要件を満たすためには、意匠の外観の完全な開示を構成するのに十分な数の図を含まなければならない。)

 

※この記事は一般的な情報、執筆者個人の見解等の提供を目的とするものであり、創英国際特許法律事務所としての法的アドバイス又は公式見解ではありません。