産業構造審議会知的財産分科会意匠制度小委員会の第14回意匠審査基準ワーキンググループが、2018年10月17日に開催され、審査基準改訂の方向性が了承された。その後、改訂案についての意見(パブリックコメント)の募集が2018年11月6日から12月5日まで実施された。

追記:
意匠審査基準の一部改訂については、2019年1月9日に公表され、2019(平成31)年1月10日以降に審査される意匠登録出願に適用される。特許庁の発表はこちら。なお、「第5部 一意匠一出願」、「第7部第2章 組物の意匠」及び「第13部別添 組物の構成物品表」が対象で、本稿の説明における内容の多くは今回の一部改訂に含まれていない。

今回の改訂が検討された背景には、日本の実務における記載要件が厳しすぎるという声の存在が挙げられる。具体的には、ハーグ協定のジュネーブアクトに加入して以来、外国の出願人による出願に対し、記載要件違反を理由とする拒絶理由通知が増加しており、国際協調の必要性が高まったからと見てよいだろう。

具体的な改訂の方向性には下記が含まれており、願書や図面の記載要件についての具体例の追加のほか、記載要件を緩和する方向の改訂内容が目立っているほか、全体意匠と部分意匠の関係を見直すなど、今までの実務とは大きく異なる運用となる項目も存在する。

  • 左右等に連続する意匠や、コードなど長い部材を中間省略するような意匠の図法と願書の記載の緩和
    下図のような窓枠材であれば、窓枠材の性質から、意匠の説明の記載が無くても、左右に連続することが明らかであるとされている。

    窓枠材
  • 部分意匠であるのか部品の意匠であるのか不明な場合の事例の追加
    下図のように充電台を含めた意匠のうちのアイロン本体の部分意匠なのか、充電台の使用状態を示しているのか不明であるため、意匠に係る物品が不明であるとされている。なお、本事例の意匠に係る物品の欄の記載である「Part of Iron」との記載も、不適切なものとして示されている(【出典】(3)の別紙I(1)5参照)。

    Part-of-Iron
  • 6面図のうち、一部の図面(例えば底面図)を提出していない場合の取り扱い
    願書に添付された図面において意匠に係る物品全体の形態が表されておらず、省略する旨の記載のない場合は、部分意匠として取り扱うものとされている。
  • 物理的に分離した部分の部分意匠の例の追加
    左下の底面図が提出されていない場合、矢印の赤い部分は図示されてないため権利不請求部分と認定され、権利請求部分が物理的に分離するが、一意匠として取り扱われるとされている。

    くぎ1 くぎ2(底面図)
  • 全体意匠と部分意匠の間でも、先後願や関連意匠の規定の適用判断を行う
    従来は、部分意匠の出願については、願書に【部分意匠】の欄を設ける必要があり、また、全体意匠と部分意匠の間で、先後願や関連意匠の規定に関する類否判断を行わないことになっていた。今回の改訂案では、願書の【部分意匠】の欄の記載を廃止し、先後願(9条関係)や関連意匠(10条関係)の規定については、全体意匠と部分意匠の間でも類否判断を行うこととされている。
    ただ、改訂案には類否判断の基準についても言葉で説明がされているが、具体的事例においてどのような場合に類似と判断されるかについて明らかとは言えない。また、全体意匠と部分意匠とが関連意匠として登録された場合、権利範囲としてはどのような意味を持つのか明確ではない。
  • 複数の物品から成り立つものについて、一物品と判断される例と2以上の物品と判断される例の追加
    容器付きゼリーの例(容器とゼリーの2物品からなるが、一物品と認定)など、一物品として認定される例が追加された。

本改訂案に対する意見募集の結果は2018年12月17日付けで公表され、別紙「改訂意匠審査基準案に寄せられた御意見の概要と御意見に対する考え方」では、冒頭の(注)において下記の説明がある。

(注)本意匠審査基準改訂案の内容は、現行意匠法下における、法改正以外の課題について検討を行ったものです。意匠制度小委員会において別途検討する意匠制度の見直しが行われた際は、意匠審査基準についても、それに則した内容となるよう、改めて改訂を検討いたします。

当該意匠制度の見直しについては、【参考】欄に示す情報のほか、【関連記事】欄に含まれる別報も参照されたい。

【出典】
(1)特許庁「産業構造審議会知的財産分科会意匠制度小委員会意匠審査基準ワーキンググループ:第14回(平成30年10月17日)議事要旨配付資料
(2)特許庁「「意匠審査基準」改訂案に対する意見募集
(3)特許庁「「意匠審査基準」改訂案に対する意見募集の結果について
(4)特許庁「意匠審査基準の一部改訂について

【参考】
特許庁「産業構造審議会知的財産分科会商標制度小委員会:第10回(平成30年12月14日)議事要旨配付資料
特許庁「産業構造審議会 知的財産分科会 意匠制度小委員会 報告書 「産業競争力の強化に資する意匠制度の見直しについて(案)」に対する意見募集の実施について
※本稿で取り上げた審査基準の改訂と並行して進められている検討で、第10回の委員会では意匠制度の見直しに向けた報告書案が提示され、2018年12月17日~2019年1月16日の予定で意見募集を実施(報告書(案)の概要は下記のとおり)

産業競争力の強化に資する意匠制度の見直しについて(案)」の概要
1.画像デザインの保護

  • 操作画像や表示画像については、画像が物品(又はこれと一体として用いられる物品)に記録・表示されているかどうかにかかわらず保護対象とすることが適当である
  • ただし、壁紙等の装飾的な画像や、映画・ゲーム等のコンテンツ画像等は、保護対象に追加しないこととするべき
2.空間デザインの保護

  • 現行意匠法の保護対象である「物品」(動産)に加え、「建築物」(不動産)を意匠の保護対象とすべき
  • 内装についても、組物の意匠と同様、一意匠一出願の原則の例外として、家具や什器等の複数の物品等の組合せや配置、壁や床等の装飾等により構成される内装が、全体として統一的な美感を起こさせるような場合に限り、一意匠として意匠登録を認めることとし、その保護の拡充を図るべき
3.関連意匠制度の拡充

  • 関連意匠の出願を意匠公報発行日以降も可能として、出願可能期間を本意匠の出願から10年以内とすべき
  • 関連意匠にのみ類似する意匠を登録可能とするべき
  • 関連意匠の存続期間は、本意匠の意匠登録出願の日から25年とすることが適当である
4.意匠権の存続期間の延長

  • 意匠権の存続期間を「登録日から20年」から、「出願日から25年」に見直すべき
5.複数意匠一括出願の導入

  • 一の願書による複数の意匠についての意匠登録出願を認めることとすべき
6.物品区分の扱いの見直し

  • 物品自体が明確である場合には、物品区分表の区分と同程度の区分を記載していないことを拒絶理由の対象としないようにするべき
7.その他

  • 刊行物やインターネット上で公開されている意匠についても、創作非容易性の判断要素となることを明示するべき
  • 組物の意匠についても、部分意匠の登録を認めるべき
  • 意匠法においても、特許法に倣い、多機能品型間接侵害規定を導入するべき
  • 指定期間経過後の延長手続を可能とすべき
  • 優先権主張を伴う出願について、優先期間徒過後の優先権主張を可能とすべき

【関連記事】
知財トピックス [意匠/日本]<コラム>「産業競争力とデザインを考える研究会」について 2017-10-05
知財トピックス [意匠/日本]意匠審査基準改訂について ~ハーグ協定の運用実績および国際協調を意識して、願書及び図面の記載要件を一部緩和~ 2018-05-21
知財トピックス [意匠/日本]<コラム>特許庁、意匠制度の見直しの検討課題に対する提案募集 2018-09-20

***追記(2019年1月9日、11日)***
2019年1月9日に特許庁ウェブサイトで公表された「意匠審査基準の一部改訂について」を出典(4)として追加し、本文に追記

※この記事は一般的な情報、執筆者個人の見解等の提供を目的とするものであり、創英国際特許法律事務所としての法的アドバイス又は公式見解ではありません。