2018年は下記の1.~3.の法律が公布されたことによる知財関連法の改正のほか、関連する審査基準の改訂等が行われた。

  1. 不正競争防止法等の一部を改正する法律(平成30年法律第33号)
  2. 著作権法の一部を改正する法律(平成30年法律第30号)
  3. 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律(平成30年法律第70号)

本稿では2018年12月中旬時点で未施行の改正事項を中心に概要を紹介する。施行済み及び既報の改正事項については本文中のリンク先又は【関連記事】欄の記事を参照されたい。

(1)減免・猶予関連の特許法改正は2019年4月1日施行

上記1.については、特許法等を対象とする「新規性喪失の例外期間の延長」のように公布後まもなくに施行された改正事項もあるが、2018年12月下旬時点で未施行の改正事項のうち、特許の料金関係については、関連する政令案・省令案の意見募集において2019年4月1日施行予定であることが発表されている。

追記:2018年12月28日に関係政令が閣議決定され、施行期日は2019年4月1日となることが確定した(特許庁による発表はこちら)。料金関係の概要は下記のとおり。適用対象及び経過措置に関する説明は特許庁ウェブサイト「手数料等の減免制度について」等のページで追って公表されるものと思われる。

○減免及び軽減申請手続関連
特許法新109条の2(特許料)、特許法新195条の2の2(審査請求料)、国際出願法新18条の2(国際出願関連手数料)の軽減対象者及び軽減率:

  • 中小事業者、特定中小事業者、試験研究機関等(大学、大学の技術移転を行う事業者、試験研究独立行政法人等):1/2軽減
  • 小規模企業(従業員20人以下)、ベンチャー企業(設立10年未満):2/3軽減
  • 福島復興再生特別措置法に係る事業を行う中小事業者:3/4軽減

○審査請求料の改定(値上げ)
通常の特許出願に係る出願審査請求料の場合:

  • 改定前:118,000円+請求項×4,000円
  • 改定後:138,000円+請求項×4,000円

ただし、新たな審査請求料は関連政令の施行後(2019年4月1日以降)にする特許出願に適用
分割・変更出願については、現実の出願日に基づいて新旧料金の適用が判断されるため、出願日を遡及して料金が適用されることはない
その他、国際特許出願に係る出願審査請求料の改定等に関する情報を含む特許庁のお知らせはこちら

また、不正競争防止法の改正のうち、限定提供データに係る不正競争の新設は2019年7月1日に施行されるが、2017年12月から検討が続けられていた「限定提供データに関する指針(ガイドライン)」は2018年11月22日から12月21日まで意見募集が実施され、2019年初頭の策定・公表が見込まれる(経済産業省知的財産政策室「限定提供データに関する指針(案)の概要」の2ページ(PDF)参照)。

(2)著作権法30条の4、47条の4、47条の5等関係等の改正は2019年1月1日施行

上記2.については、既報のとおり、著作権法35条等関係を除いて、「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備(30条の4、47条の4、47条の5等関係)」をはじめとする改正事項が2019年1月1日に施行される。

(3)TPP11協定関連の法改正は2018年12月30日施行

上記3.は、2016年12月に公布済みのTPP整備法(環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律)の施行期日を環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)の発効日に改正するものであり、同協定が発効する2018年12月30日に下記の事項が施行される。

既報のとおり、TPP11協定における知的財産関連の合意内容では、環太平洋パートナーシップ協定(TPP12協定)の合意内容のうち、著作物等の保護期間の延長、審査遅延の補填としての特許期間延長等の項目は凍結されているが、日本は自発的に施行する形となる(TPP11協定関連の法改正についての概要はこちら(PDF))。なお、著作物等の保護期間の延長については、2019年2月1日に発効する日EU経済連携協定(EPA)において「知的財産に関する基準」に含まれていることから、発効に先行しての施行となる。

  • [著作権法]著作物等の保護期間を50年から70年へ延長(文化庁ウェブサイトで提供されているQ&Aはこちら
  • [著作権法]著作権等侵害罪の一部非親告罪化(対象についてはこちら(PDF))
  • [著作権法]損害賠償に関する規定の見直し(侵害された著作権等が著作権等管理事業者により管理されている場合に請求可能な損害額:詳細はこちら(PDF))
  • [特許法]期間補償のための特許権の存続期間の延長制度(2020年3月10日以後の特許出願に適用)
  • [商標法]商標の不正使用に対する法定の損害賠償制度

これらのうち、「期間補償のための特許権の存続期間の延長制度」の概要は下図のとおりで、特許庁に起因する審査遅延の補填を目的とするものであり、2020年3月10日以後の特許出願に適用される。なお、日本では審査請求日から権利化までの期間は平均14.1月(2017年)となっていることから、該当する特許権は少なくなることが予想される。

 〈図:期間補償のための特許権の存続期間の延長制度(概要)〉

期間補償のための特許権の存続期間の延長制度

また、「商標の不正使用に対する法定の損害賠償制度」は、登録商標(社会通念上同一の商標を含む)の使用による侵害について損害の賠償を請求する場合において、当該登録商標の取得及び維持に通常要する費用に相当する額を損害額として請求できるものとなっている(概要はこちら(PDF))。

【出典】
(1)特許庁「不正競争防止法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備に関する政令案及び不正競争防止法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係省令の整備に関する省令案に対する意見募集について」(※政令案の概要はこちら(PDF)、政令案の新旧対照条文はこちら(PDF))
(2)e-Gov「パブリックコメント:限定提供データに関する指針(案)に対する意見公募について
(3)文化庁「平成30年12月30日施行 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)の発効に伴う著作権法改正の施行について
(4)特許庁「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律(平成28年12月16日法律第108号)
(5)特許庁「産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第13回 審査基準専門委員会ワーキンググループ 議事要旨議事次第・配布資料一覧
(6)経済産業省「「不正競争防止法等の一部を改正する法律」の一部の施行のための関係政令が閣議決定されました
(7)特許庁「不正競争防止法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令(平成31年1月8日政令第1号)及び不正競争防止法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備に関する政令(平成31年1月8日政令第2号)
(8)特許庁「出願審査請求料改正のお知らせ(2019年4月1日施行)
(9)内閣官房・TPP等政府対策本部「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案について
(10)外務省「日EU経済連携協定(EPA)」※著作物等の保護期間の延長(著作者の死後70年等)が「知的財産に関する基準」として示されている「日EU経済連携協定(EPA)に関するファクトシート」はこちら(PDF)

【参考】
特許庁「2019年 年頭所感 ~特許庁長官 宗像 直子~」※「今年4月から、全ての中小企業を対象に、特許料金を一律半減します。軽減手続には、定款や法人の登記事項証明書などの証明書は一切不要とし、抜本的に簡素化します。」とある
特許庁「手数料等の減免制度について」※特許料等の減免制度に関するQ&Aなどへのリンクがまとめられているページ
文化庁「著作物等の保護期間の延長に関するQ&A

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***更新情報(2018年12月27日)***
審査請求料の改定(案)について、「不正競争防止法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備に関する政令案に対する意見募集結果について」の情報を追加(2018年12月26日付けで公示された政令案に対する意見募集結果の「意見募集に対する回答(PDF)」では、「今般の審査請求料の値上げに当たっては、政令の施行日前にした特許出願に係る手数料については、なお従前の例によることとする経過措置を設ける」とある)

***更新情報(2018年12月28日、2019年1月4日、9日)***
2018年12月28日に経済産業省ウェブサイトで公表された「「不正競争防止法等の一部を改正する法律」の一部の施行のための関係政令が閣議決定されました(出典(6))」のほか、出典(7)~(10)、【参考】の情報等を追加し、本文を一部変更

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