1 はじめに
製品等を販売する際に、その取引条件が独占禁止法に違反しないか検討することは重要である。今回は、特許ライセンス契約における販売先制限について焦点を当てる。

2 「販売先制限」の概要
公正取引委員会が運用基準として示している「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」(以下「知財ガイドライン」という。)における「第4 不公正な取引方法の観点からの考え方」の4(2)イによると、「ライセンス技術を用いた製品の販売の相手方を制限する行為(ライセンサーの指定した流通業者にのみ販売させること、ライセンシーごとに販売先を割り当てること、特定の者に対しては販売させないことなど)は、・・・、公正競争阻害性を有する場合には、不公正な取引方法に該当する(一般指定第12項)」としている。

3 事例紹介
公正取引委員会は、独占禁止法に関して相談事例とその回答について公表している。今回は、「特許ライセンス契約における販売先制限」に関連する相談事例を簡略化してご紹介する。

独占禁止法について~販売先制限~_事例紹介

(相談事例要旨)
A社は、外資系自動車メーカーである。A社は、ある自動車部品について日本国内で特許権を取得しているところ、自動車部品メーカーに当該部品の生産・販売についてライセンスすると、当該部品が自由に流通するおそれがあることから、ライセンス条件について合意のできた自動車メーカーに対してのみ、当該部品の生産・使用につき直接ライセンスしている。

そして、A社は自動車メーカーであるB社から当該自動車部品についてライセンスの申入れを受け、A社はそれに応じることとした。その際、B社から、ライセンス料はB社に部品を納品している部品メーカーC社が支払うため、直接C社とライセンス契約を締結してほしい旨の申入れがあり、最終的にA社はC社と当該部品の生産・販売に係るライセンス契約を締結することとなった。その際、A社はC社に対して、特許製品をB社にのみ販売することを義務付けたいと考えている事案。

(回答の要旨)
「本件は、A社がC社に対して、特許製品たる自動車部品の生産・販売についてライセンスする際に、その販売先を指定するものである。」としている。

しかしながら、以下のア、イの事情を挙げている。

 A社は従来から、他の自動車メーカーに対して、当該部品の生産・使用についてライセンスしており、本件も、当初は自動車メーカーであるB社からの申入れを受け、他社と同様の条件を提示したものであるところ、その後、B社から、C社へのライセンスとするよう申入れがあったものであり、実質的にはB社へのライセンスと認められること

 他の自動車メーカーも、A社から、当該部品の生産・使用に係るライセンスを受けており、C社から当該部品を購入できなくても、事業活動の継続に何ら影響を受けるものではないこと」。

上記ア、イを踏まえて、「本件については、当該自動車部品及び自動車に係る製品市場における公正な競争が阻害されるおそれがあるとは認めがたく、直ちに独占禁止法上問題となるものではない。」としている。

4 まとめ
知財ガイドラインによると、特許ライセンス契約において販売先の制限は、公正競争阻害性を有する場合には不公正な取引方法に該当する。しかしながら、回答の要旨を踏まえると、販売先を制限することが直ちに違法とはならない。

アのように当事者の関係性を実質的に検討することや、イのように販売先を制限することによる市場への影響を検討することが重要である。

【出典】
公正取引委員会「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針
公正取引委員会「相談事例集:(平成16年度)9 特許ライセンス契約における販売先制限

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