1 はじめに
スマートフォンの普及に伴い、インターネットで自身の意見を発信する方も増えております。私自身もSNSを利用して楽しんでいるのですが、一歩間違えて他人の権利を侵害してしまえば、損害賠償等の責任を負うことになってしまいます。

今回は、インターネットで権利を侵害された側が損害賠償請求をするにはどのような手続を踏むのかという点を、筆者の経験も交えつつ簡単にご説明したいと思います。(なお、インターネット上の情報を消すための手続は、今回は扱わないことにします。)

2 インターネットにより権利を侵害された場合は?
権利侵害といっても色々とあります。インターネットの場合、名誉棄損や誹謗中傷が典型的ですが、著作権侵害行為も同じく権利侵害行為の一種です。これらの行為をした場合、民法709条に基づき、損害賠償義務を負うことになります。具体的には、精神的苦痛を被ったことを理由とする損害の賠償(いわゆる慰謝料)請求であることが多いです(著作権侵害の場合はライセンス料相当額等)。

もっとも、インターネットにおける権利侵害の問題は、加害者が直ぐにはわからない場合があることです。損害賠償請求をしようにも、どこの誰に請求すれば良いのかわからなければ、どうしようもありません。そこで出てくるのが、表題にもある「発信者情報開示請求」という制度です。いわゆるプロバイダ責任制限法に基づく手続であり、これを用いれば、投稿者の情報を把握しているプロバイダから情報を得ることができます。

3 発信者情報開示手続の流れ
では、具体的に、発信者情報を得るための手続につきご説明します。誤解を恐れず簡単に述べますと、次のとおりです。

①サイト運営者にIPアドレス等を開示してもらう

②投稿者が契約しているプロバイダ(携帯電話会社等)に投稿者(契約者)の名前と住所等の情報を開示してもらう

投稿者(厳密には契約者)は、インターネットプロバイダ(以下、「契約プロバイダ」といいます。)と契約し、契約プロバイダからIPアドレスを割り当てられ、これを利用して投稿を行います。また、サイト運営者は、投稿者の個人情報は持っていないものの、IPアドレスの情報は持っています。ですので、サイト運営者から、問題の投稿に関するIPアドレスを教えてもらった上で、投稿時点のIPアドレスの使用者を、契約プロバイダから教えてもらうわけです(IPアドレスがわかれば、そのIPアドレスを管理しているプロバイダを調べることができます。)。

発信者情報開示請求について

①も②も、訴訟を起こさなくても可能な手続ですが、特に②は個人情報の問題もあり、訴訟なしに応じられることはほぼ無いようです。また、契約プロバイダは、IPアドレスの使用者に関する情報の保存期間を限定していますので(3か月程度のことが多いようです。)、急ぎの場合は裁判所の仮処分手続を検討する必要が生じます。

なお、①も②も、当然、権利侵害を受けた場合にのみ可能な手続です(逆にいえば、権利侵害をしない限り、個人情報を開示されることはありませんので、ご安心ください。)。また、発信者情報開示請求を受けた契約プロバイダは、投稿者に対し、開示してよいか等を照会することになっています。

4 おわりに
以上を経て、ようやく加害者の情報を取得できます。そして、加害者に対する損害賠償請求はここから始まります。思ったより大変と思われたのではないでしょうか?

なお、以上の説明は一般的な場合を指しており、案件によっては、IPアドレスのみでなく他の情報を取得する必要がある場合など、個別の事情により必要な対応が異なることがあります。したがって、開示請求を検討される場合には、早期に専門家へご相談されることをお勧めいたします。

※この記事は一般的な情報、執筆者個人の見解等の提供を目的とするものであり、創英国際特許法律事務所としての法的アドバイス又は公式見解ではありません。