数年間延期されていた改正カナダ商標法(Bill C-31)の施行日が2019年6月17日となることが発表された。主な変更点は下記の通りで、これまでの制度が大きく変わることになる。

○出願基礎の廃止
出願・登録に際して、「ベース(基礎)」が不要となり、商標の使用開始日及び/又は本国における出願・登録の情報や本国登録証の提出は不要となる。

○使用宣誓書の廃止
使用主義的な登録要件は廃止され、異議申立期間を経過すれば登録証が発行されることになる。新規出願のみならず、係属中の全ての出願に適用されるため、既に許可通知書が発行されている出願は、2019年6月17日以降、登録料(CAD200)の納付により登録することが可能となる。

○新しいタイプの商標の保護
商標の定義は大幅に拡大され、出所の表示として機能するあらゆるものを保護することが可能となり、例えば色彩(のみからなる商標)、ホログラム、動き、におい、味、テクスチャが保護対象となる。

○分割出願制度の導入

○マドリッドプロトコル(マドプロ)への加盟
追記:世界知的所有権機関(WIPO)のウェブサイトで公表された2019年3月18日付けリリースにて、マドリッドプロトコルの発効は法改正の施行日と同日の2019年6月17日となることが発表されている。

○商標権の存続期間の変更
他国と調和を図るために、存続期間が「登録日から15年」から「登録日から10年」に変更される。なお、既存登録については15年のままで変更はない。

○区分制度の導入
カナダは国際分類表(ニース分類)を採用していない世界で唯一の国だったが、区分制度が導入される。これに伴い、改正法施行後は下記のように区分単位で庁費用が発生する。

商標登録出願料:CAD330
2区分目以降の加算額:1区分毎にCAD100
*上記費用には、登録料のCAD200が含まれる
(現行は区分の数に拠らず、CAD250)

商標権存続期間更新登録出願:CAD400
2区分目以降の加算額:1区分毎にCAD125
(現行は区分の数に拠らず、CAD350)

コメント:

上述のように、改正法施行後は使用していない商標の登録も可能になることから、悪意による冒認出願の増加が懸念されている。そのため、冒認出願対策の観点からの新規出願を検討する必要がある。また、指定商品等が3区分以上となる新規出願については登録料を除く出願時庁費用は値上げとなるため、改正法施行前の出願を検討することが望ましい。

なお、2018年12月13日には次期商標法改正案(Bill C-86)が成立し、「悪意を根拠とする異議理由及び無効理由の導入」や「登録商標の権利行使における使用要件」が含まれているため(出典(3)からの下記引用における(a)及び(b)参照)、本稿掲載時点(2019年2月時点)で施行日は未定であるが冒認出願への対策が進められるものと考えられる。(追記:悪意を根拠とする異議理由については、カナダ知的財産庁のPractice Noticeにおいて2019年6月17日施行の改正事項として示されている。)

Subdivision B of Division 7 of Part 4 amends the Trade-marks Act to, among other things,
(a)add bad faith as a ground of opposition to the registration of a trade-mark and for the invalidation of a trade-mark registration;
(b)prevent the owner of a registered trade-mark from obtaining relief for acts done contrary to section 19, 20 or 22 of that Act during the first three years after the trade-mark is registered unless the trade-mark was in use in Canada during that period or special circumstances exist that excuse the absence of use;
(c) clarify that the prohibitions in subparagraph 9(1)‍(n)‍(iii) and section 11 of that Act do not apply with respect to a badge, crest, emblem or mark that was the subject of a public notice of adoption and use as an official mark if the entity that made the request for the public notice is not a public authority or no longer exists; and
(d) modernize the conduct of various proceedings before the Registrar of Trade-marks, including by providing the Registrar with additional powers in such proceedings.

【出典】
(1)カナダ知的財産庁「Joining the Singapore Treaty, the Madrid Protocol and the Nice Agreement, and Modernizing Canada’s Trademarks Regime — An Overview
(2)カナダ知的財産庁「Draft resources for upcoming trademarks legislative changes
(3)カナダ議会「BILL C-86 (Royal Assent)
(4)世界知的所有権機関(WIPO)「Canada Joins Three Key WIPO Trademark Treaties
(5)カナダ知的財産庁「Navigating the Changes to Opposition and Section 45 Proceedings
(6)カナダ知的財産庁「Resources for trademarks legislative changes

【参考】
カナダ知的財産庁「International Trademarks under the Madrid Protocol
カナダ知的財産庁「The Madrid Protocol in Canada: A Summary of the General Principles

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***更新情報(2019年3月19日)***
出典(4)を追加し、マドリッドプロトコルの発効に関する情報を本文に追記

***更新情報(2019年7月19日)***
出典(5)及び(6)を追加し、悪意を根拠とする異議理由に関する情報を本文に追記

***更新情報(2019年7月29日)***
【参考】を追加

※この記事は一般的な情報、執筆者個人の見解等の提供を目的とするものであり、創英国際特許法律事務所としての法的アドバイス又は公式見解ではありません。