1 はじめに
平成31年1月23日に、経済産業省が公開している「営業秘密管理指針」(PDF)が改訂されました。この文書は、不正競争防止法の定める「営業秘密」(法2条6項)の要件を説明し、同法の保護を受けるために必要となる最低限の水準の対策を示すものです。裁判所がこの指針に拘束されるわけではありませんが、営業秘密性を判断するにあたり参考になります。以下、上記営業秘密管理指針の内容を簡単にご紹介いたします。

2 「営業秘密」について
法の定める「営業秘密」(法2条6項)に該当した場合、これについて法が不正競争として定める行為(従業員等が営業秘密を図利加害目的で第三者に開示する行為等)をすれば、損害賠償責任等の責任を負うことになります。

そのような「営業秘密」に該当するための要件は、次の3つをいずれも満たすことです。

①【秘密管理性】秘密として管理されていること
②【有用性】生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上または営業上の情報であること
③【非公知性】公然と知られていないもの

3 ①「秘密管理性」要件について
何が営業秘密なのかが、従業員等にとって明らかである必要があるため、「秘密として管理されている」情報のみが営業秘密に該当し得ることになっています(例えば、営業秘密として管理されていない情報を社外に持ち出して、不正競争行為だと嫌疑をかけられてしまうのでは、従業員は困るわけです。)。この観点から、「明確性」だとか、「予見可能性」といったキーワードで、①秘密管理性要件の趣旨が説明されています。では、具体的にどうすれば、「秘密として管理されている」といえるのでしょうか。

営業秘密管理指針は、「具体的に必要な秘密管理措置の内容・程度は、企業の規模、業態、従業員の職務、情報の性質その他の事情の如何によって異なるものであり、企業における営業秘密の管理単位における従業員がそれを一般的に、かつ容易に認識できる程度のものである必要がある。」とします。・・・やや明確でないところもありますが、要するに、それぞれの企業の事情に応じて、従業員が、一般的かつ容易に営業秘密として認識され得るような措置をとっておく必要がある、と理解して良いと思います。そのうえで、典型的な秘密管理措置として、次のような方法が示されております。

ア 紙媒体
・文書あるいはファイルに「マル秘」等の表示
・施錠可能なキャビネットや金庫等に保管
イ 電子媒体
・記録媒体(CD等)、電子ファイル名、電子フォルダ名、ドキュメントファイルのヘッダーへの「マル秘」等の表示
・閲覧するためのパスワード設定
ウ 物件に営業秘密が化体している場合
(例えば、製造機械や金型、新製品の試作品など)
・扉に「関係者以外立入禁止」「写真撮影禁止」等の表示
・警備員の配置、入館IDカードが必要なゲートの設置等、工場内への部外者の立ち入りを制限
・営業秘密リスト作成・同リストを従業員内で閲覧・共有化
エ 媒体が利用されない場合(ノウハウ等)
・営業秘密のカテゴリーをリスト化、具体的に文書等に記載

いかがでしょうか。あなたの在籍している会社でも、「マル秘」とされている資料はあるのではないでしょうか。これは、①秘密管理性要件の観点で重要な措置だったわけですね。

4 ②「有用性」および③「非公知性」要件について
③非公知性要件は、「当該営業秘密が一般的に知られた状態になっていない状態」、又は「容易に知ることができない状態」とされています。例えば、一般に売られている商品について、リバースエンジニアリングにより秘密情報を知ることが可能であるとしても、その実施に時間的・資金的に相当のコストを要する場合には、なお営業秘密に該当し得ることになります。

②有用性要件が認められるためには、その情報が客観的にみて、事業活動にとって有用であることが必要とされています。①秘密管理性要件及び③非公知性要件を満たす場合、②有用性要件が認められやすいとされています。

5 おわりに
以上、「営業秘密」として法律上保護されるための要件についてご説明しました。しかしながら、法律上保護されるか否かにかかわらず、社外に出すべきでない情報は厳密に管理すべきで、そのためには、社内で、社内情報を大切にする意識を共有する視点が大変重要です。

今回は紹介しきれませんでしたが、経済産業省は、営業秘密管理指針とは別に、「秘密情報の保護ハンドブック」(PDF)を公開し、前記営業秘密に限られない情報の管理方法について、一定の見解と保護方法を示しています。こちらも参照しつつ、これを機会に、社内の秘密管理状況を見直されるのはいかがでしょうか。

【参考文献】
新・注解不正競争防止法(第3版)(小野昌延編著)
不正競争防止法(経済産業省)
営業秘密管理指針 最終改訂:平成31年1月23日(PDF)
秘密情報の保護ハンドブック 平成28年2月(PDF)

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