2016年8月26日に施行された現行インドネシア特許法(2016年改正法)では、インドネシア国内において特許を受けた物を製造し又は方法を使用する義務(20条)が規定されており、特許発明の不実施の場合における強制実施権(82条)や特許の取消(132条(1)(e))も規定されている。

強制実施権の場合、申請理由の1つには実施義務を特許付与後36か月以内に果たしていないこと(82条(1)(a))があるが、この「36か月以内」の期限については、最長5年(更新可能)の猶予申請に関する規定を含む省令(2018年15号)が定められ、2018年7月11日に施行されている。当該省令では、旧法下で登録された特許の扱いについて明示の規定は見受けられないが、現地からの情報によれば、現行法下だけでなく旧法下で登録された特許についても、猶予申請により実施義務の履行を延期することが可能で、下記の提出期限が設定されている。

  • 旧法下で登録された特許:2019年8月26日(現行法の施行日から3年)まで
  • 現行法下で登録された特許:登録日から3年以内

また、猶予申請に必要な書類は下記のとおりと伝えられている。

  1. 猶予申請書
  2. 委任状
  3. (法人の場合)設立証書の謄本又は複写、(個人の場合)有効な身分証明書又は入管書類の謄本又は複写
  4. 猶予に関する証拠書類(written evidence)
  5. 最新分の年金納付のレシート(コピー可)

※2019/7/30追記:
インドネシア知的財産総局のウェブサイトにアクセスした際に表示される画像(アクセス日:2019/7/30)では猶予申請に関する説明が示されているが、上記の必要書類のうち、「1.猶予申請書」に相当すると思われる書類は「理由を伴う特許権者からの指示書(Surat instruksi dari pemegang Paten disertai alasannya)」と文言が変わっており、「3.設立証書の謄本等」及び「4.猶予に関する証拠書類」に相当する書類は示されていない。なお、同画像にはこれらが手続要件の見直しであるかについて明示はない。また、旧法下で登録された特許の取扱い及び提出期限(2019年8月26日)に関する説明もない。

猶予申請が認められれば、強制実施権設定又は特許取消のリスクを低減する効果が期待される。しかしながら、前者については、特許権者から実施権を得るための努力を行ったが成果がなかったこと等の要件が課されており(84条(1))、後者については、検索官又は国益を代表する者が商務裁判所に取消訴訟を提起することができるとされている(132条(4))。すなわち、所定期間経過後に自動的に強制実施権が設定されたり、特許が取り消されたりすることはない。したがって、猶予申請の提出を検討する際にはリスクとコストとのバランスを検討することも必要と考えられる。

【出典】
インドネシア知的財産総局PENGUMUMAN: PROSEDUR PENGAJUAN PENUNDAAN PELAKSANAAN PATEN(JPG)」
ジェトロ「ASEAN知財動向報告会(2019年5月15日開催):ASEAN知財概況紹介 2(1)インドネシア 特許実施義務とその猶予について(PDF)」
ジェトロ「インドネシア> 知的財産に関する情報 法令・判例:特許法(2016)仮訳(PDF)」
ジェトロ「インドネシア> 知的財産に関する情報 法令・判例:特許権者による特許の実施に関するインドネシア共和国法務・人権省令2018年15号(仮訳)(PDF)」
ジェトロ「インドネシア> 知的財産に関する情報 法令・判例:インドネシア共和国法務・人権省令2018年15号に基づく特許権者による特許実施義務の猶予申請書(仮訳)(PDF)」
ジェトロ「インドネシア> 知的財産に関する情報 法令・判例:インドネシア共和国法務・人権省令2018年15号に基づく特許権者による特許実施義務の猶予更新申請書(仮訳)(PDF)」

【参考】
日本特許庁「外国産業財産権制度情報 インドネシア:特許法(2001年8月1日法律第14号改正)(PDF)」※旧法の実施義務に関する規定は17条参照

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***更新情報(2019年7月29日、30日、31日)***
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