1 はじめに
ライセンス契約の実務において、ライセンサーのライセンシーに対する拘束が独占禁止法に違反しないか検討することは重要である。今回は、「競合品の製造を禁止すること」又は「競合品の製造に係るライセンス料率を高額にすること」について焦点を当てる。

2 独占禁止法と知的財産法との関係
独占禁止法21条は、「著作権法、特許法、実用新案法、意匠法又は商標法による権利の行使と認められる行為にはこれを適用しない。」と規定している。他方、外形上、権利の行使とみられる行為であっても、行為の目的、態様、競争に与える影響の大きさを考慮した上で、知的財産制度の趣旨に反するなどした場合には、独占禁止法が適用される(知的財産ガイドライン第2-1参照)。

そして、独占禁止法や知的財産ガイドラインには以下の基準が示されている。

  1. ライセンサーがライセンシーに対し、当該技術を利用して事業活動を行うことができる分野(特定の商品の製造等)を制限することは、原則として不公正な取引方法に該当しない(知的財産ガイドライン第4-3(1)ウ)。
  2. 事業者が不当に、ある事業者に対し取引の条件又は実施について有利な又は不利な取り扱いをすることは、不公正な取引方法に該当する(一般指定第4条)。

3 事例紹介
公正取引委員会は、独占禁止法に関して相談事例とその回答について公表している。今回は、「電子部品メーカーによるライセンス条件の設定」に関する相談事例をご紹介する。

lawtopics201911

 

(相談事例要旨)
X社は電子部品Aのメーカーである。電子部品Aは、複数の用途に用いられ、仕様によって3種類に分類される(電子部分A1、A2、及びA3)。X社は、電子部品A1を製造している(A2及びA3については製造していない)が、電子部品A1を製造するメーカーはX社以外に存在しない。電子部品A2及びA3については製造するメーカーが存在する。

X社は、電子部品A1及びA2両方の製造を可能とする製造技術に関する特許(以下、「本件特許」)を有している。

X社は、電子部品Aを製造するメーカーに本件特許をライセンスしたいと考えているが、本件特許のライセンシーは電子部品A2のみならずA1についても製造することができるようになるため、X社と競合する可能性が生じる。そこで、X社は、以下のライセンス条件を設定することを検討しているという事案。

  1. ライセンシーはX社と競合する電子部品A1を製造しないものとする。
  2. ライセンシーが、上記1の条件を受諾しない場合は、競合品A1の製造を認めるが、製造を認めない場合と比してライセンス料率を高額に設定する。

(回答の要旨)

  1. 条件1は、外形上、権利の行使とみられる行為に該当する。しかし、事実上、ライセンサーがライセンスする本件特許の範囲を指定しているにすぎないしたがって、条件1は、ライセンサーがライセンシーに対し、ライセンスする技術を利用して事業活動を行うことができる分野を制限する行為に該当する(原則不公正な取引方法に該当しない)。
  2. 条件2は、外形上、権利の行使とみられる行為に該当する。ライセンス料率をライセンシーが合意できる範囲で設定するのであれば、ライセンシーの事業活動を不当に制限するとまではいえない。

よって、上記ライセンス条件を設定することは独占禁止法上問題となるものではない。

4 おわりに
本来、ライセンサーは特許を独占的に使用等できるのであるから、ライセンスの範囲を自由に指定できる。そのため、条件1は不公正な取引とはいえない。また、ライセンス料率についても当事者間で合意があれば基本的には問題がない。そのため、条件2についても不当な制限とはいえない。

ライセンス条件の設定に関して、条件の内容(制限の実態)を精査し、事実上競争を制限しているか検討することが重要である。

 

※この記事は一般的な情報、執筆者個人の見解等の提供を目的とするものであり、創英国際特許法律事務所としての法的アドバイス又は公式見解ではありません。