1 はじめに
経済産業大臣は、平成28年2月22日告示により、「特許法 第35条第6項に基づく発明を奨励するための相当の金銭その 他の経済上の利益について定める場合に考慮すべき使用者等 と従業者等との間で行われる協議の状況等に関する指針」(以 下「本ガイドライン」という。)を公表した。今回は、職務発明 規程に関連する本ガイドラインに焦点を当てる。

2 特許法35条の仕組み
使用者が職務発明規程に基づいて従業者の発明を取得・承 継した場合、従業者は「相当の利益」を受ける権利を有する(特 許法第35条第4項)。多くの企業は、職務発明規程の中で、「相 当の利益」に関する規程を設けている。その内容は企業によっ て様々であり、何をもって相当といえるのか問題となる。 特許法第35条第5項は、「相当の利益」の内容を決定する ための基準を職務発明規程などで定める場合、当該基準を策 定するに際して行われる協議の状況、当該基準の開示の状況、 及び従業者からの意見の聴取の状況などを考慮して、当該基 準に基づいて「相当の利益」を付与することが不合理であって はならない旨を規定している。すなわち、当該基準の策定が適 正な手続きをもってなされていれば、具体的な金額に関わら ず「相当の利益」の付与は不合理とならない。もっとも、手続 きが不合理か否かについては必ずしも明確ではない。「相当の 利益」についての予見可能性を高めて発明者を保護し、これに よって発明を奨励することを目的として本ガイドラインが公表 された。

3 本ガイドラインの概要
(1)相当の利益の内容を決定するための基準の策定に際して使 用者等と従業者等との間で行われる協議の状況について
「協議」とは、基準を策定する場合において、その策定に関 して、基準の適用対象となる職務発明をする従業者等又はそ の代表者と使用者等との間で行われる話合い(書面や電子 メール等によるものを含む。)全般を意味することを明示した。 例えば、従業者等が代表者を通じて話合いを行う場合の適 正な在り方等について明示している。

(2)策定された当該基準の開示の状況について
「開示」とは、策定された基準を当該基準が適用される各従 業者等に対して提示することを意味することを明示した。 例えば、イントラネットで基準を開示する場合に個人用電 子機器を与えられていない従業者等がいる場合の適正な在り 方等について例示している。

(3)相当の利益の内容の決定について行われる従業者等から の意見の聴取の状況について
「意見の聴取」とは、職務発明に係る相当の利益について定 めた契約、勤務規則その他の定めに基づいて、具体的に特定 の職務発明に係る相当の利益の内容を決定する場合に、その 決定に関して、当該職務発明をした従業者等から、意見(質問 や不服等を含む。)を聴くことを意味することを明示した。 例えば、あらかじめ従業者等から意見を聴取した上で相当 の利益の内容を決定する方法の場合の適正な在り方等につい て明示している。

(4)その他
今回の改正で新たに認められた金銭以外の相当の利益の具 体例や、大学や中小企業、新入社員や派遣労働者、退職者に おける特有の事情を考慮した手続きの在り方等についても明 示されている。

4 おわりに
本ガイドラインを踏まえて、自社の職務発明規程が適正な ものとなっているか、見直しをする必要がある。また、今後職 務発明規程を変更等する場合にも、本ガイドラインを参考に 適正なものになっているか検討しなければならない。

出典:特許庁ウェブサイト https://www.jpo.go.jp/system/patent/shutugan/shokumu/shokumu_ guideline.html

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