2020年3月に、店舗の外観・内装等の保護拡充を目的として、立体商標に関する審査基準が改定された。

改定の背景として、企業の特徴的な店舗の外観・内装によるブランド価値創出・サービス提供が増える一方、これらは、立体商標として保護の対象だったものの、その保護が必ずしも十分なものといえない状況にあったことが挙げられる。

●改定の概要について
今回の改定で最もインパクトがあるのは以下の2点である。

①位置商標のように、立体商標として保護を求める部分とそれ以外を実線と点線で描き分けが可能になったこと(下図)
②新しいタイプの商標のように、詳細な説明を記載できるようになったこと

〈立体商標として認められる例〉
(左:外観・右:内装)

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〈詳細な説明の例(外観の場合)〉
商標は立体商標であり、3つの多面体を含む店舗の外装を表す立体的形状からなる。なお、破線は店舗の形状の一例を示したものであり、商標を構成する要素ではない。

これにより、保護を求める立体商標の構成及び態様を具体的に特定できるようになった。また、権利化後は、店舗の外観(内装)全体では類似しないが、立体商標登録した特徴的な部分を模倣された場合に権利行使できる可能性もある。

●実務への影響について
審査基準は改定されたものの、「機能又は美観上の理由による形状の変更又は装飾に資する目的のために採用されたもの」として、「指定商品等を取り扱う店舗等の形状に過ぎない」(3条1項6号)と判断されるケースが多いと考えられる。登録に至るためには、コカ・コーラの瓶の形状のみが立体商標登録されたときのように、店舗の外観等のみで識別性を獲得していることの証明が必要となるだろう。そのためには、店舗の外観等が取り上げられた記事や、外観等を強調した宣伝広告実績等を収集しておくことが重要になる。

また、店舗の外観等に関しては、改正意匠法でも保護対象となったため、例えば以下のような戦略が考えられる。

・既に公開済みの店舗の外観等:使用による識別性獲得を証明し、立体商標登録を図る(新規性喪失で意匠登録不可)
・未発表の店舗の外観等:意匠登録し、使用実績を蓄積しながら、意匠権が満了する頃に立体商標登録する。

なお、登録可能性を高めるために、識別性を有する店舗名称やロゴとともに出願することも考えられるが、店舗の外観等の立体商標としての権利範囲は限定されてしまうだろう。

【出典】日本特許庁「商標法審査基準第15版(PDF)」

※この記事は一般的な情報、執筆者個人の見解等の提供を目的とするものであり、創英国際特許法律事務所としての法的アドバイス又は公式見解ではありません。