ドイツの連邦憲法裁判所は、2020年3月20日、欧州統一特許裁判所協定(UPC)の批准に関する法案を無効と判断し発表した。

UPCが発効すれば、EU各国での特許取得や維持、裁判のコストが大幅に下がることが期待されており、英国及びフランスを含めた16か国が既にUPCを批准していた。しかし、2017年春に「UPC批准に関する法案はドイツ憲法に違反する」としてドイツ憲法学者で弁護士でもあるStjerna氏がドイツで違憲裁判を提起したことから、その判断が待たれていた。

違憲裁判は、主に4つの理由に基づいて提起されていたが、そのうちの一つである「ドイツ国会で批准に関する決議がされたときに、その決議に参加した国会議員の数が憲法上で保証される数に足りていなかった」という理由で、今回の違憲の判断がなされた。すなわち、UPC批准に関する法案はドイツの主権をUPCに授与するものだから、議席の2/3以上というドイツ憲法が定める特別多数決議の要件を満たす必要があったにも関わらず、わずか35名の出席(議会には709の議席がある)で採決されており、この規定に違反するということであった。他の理由(・統一特許裁判所の裁判官の地位に独立性が無く、民主主義的な正当性を欠くこと、・統一特許裁判所協定がEU法に違反することなど)については、主張立証が不十分であるとして却下されている。

今回のドイツ連邦憲法裁判所の判断は手続き違反を理由とするものであり、ドイツ議会が未だUPCを推進する熱意が変わらなければ、法案の再採決により批准に向けて動きが進んで行くものと思われる。しかし、イギリスのEU離脱などもあり、2017年当時とは情勢が変わっているため、法案成立に向けて必ずしも楽観視できない。

さらに、イギリスのEU離脱を受けて単一効特許・統一特許裁判所(UP・UPC)制度の見直しも必要と言われており、修正されれば各締約国の同意を得るには時間が掛かるものと思われる。また新型コロナウィルスの影響で欧州各国は混乱の最中にある。

したがって、UP・UPC制度の開始に数年単位で大幅な遅れが生じるのが不可避な状況になっている。

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