2020年5月20日、特許権侵害に対する損害賠償の範囲を拡大する特許法の改正案が韓国国会を通過した。今年の12月には施行される見込みであり、施行日以降の損害賠償請求事件に適用される。

損害賠償額は、現行特許法では、侵害品の数量に特許権者の単位数量当たりの利益額を乗じて計算するものの、特許権者の生産能力の範囲内でのみ認められるという限界があった。例えば、侵害品の数量が100個であっても、特許権者の生産能力が10個の場合は、90個の侵害品については損害賠償を受けることができなかった。

そのため、特許権者は勝訴しても十分な金銭賠償を受けることができないため、訴訟を諦めることで侵害が繰り返されるという悪循環が起こっていた。特に、生産能力が低いベンチャー企業や零細企業を中心に問題提起されていた。

改正特許法では、特許権者の生産能力を超える部分についても合理的な実施料に基づいて損害額を計算し、損害賠償請求できるようになった。すなわち、上記の例では90個の侵害品についても合理的な実施料に基づいて損害額を計算し請求できるようになった(改正特許法第128条第2項)。

これにより、現行の日本特許法第102条第1項と事実上同一の規定が導入されることになる。なお、実用新案法は損害賠償額算定に関する特許法第128条を準用しているため(実用新案法第30条)、実用新案権侵害に対する損害賠償額の算定にも適用される。

ここで韓国では、昨年7月より、故意による特許権侵害に対しては、認定された損害額の3倍を超えない範囲で賠償額を決める「懲罰的損害賠償制度」が導入されている。今回の改正により損害賠償額が増大すれば、懲罰的損害賠償額も自然と増大することになる。

また、韓国特許庁は、特許権侵害訴訟において侵害および損害に関する証拠資料を特許権者が容易に入手できるように、韓国版のディスカバリー制度を導入する方向で検討を進めている。これらの改正を通じ、強力な特許権の保護システムを整備して、イノベーションを促進しようという意図が伺える。

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