米国では特定の法律的な争点について複数の控訴裁判所で判断が分かれることを「circuit split」と言います。今回、長い間、その一つだった論点について2020年4月23日に最高裁判決が下されました。

■事件の経緯
原告Romag社(ファスナーメーカー)は、被告Fossil社による原告製品の使用を許諾したところ、被告の中国工場による模倣品の使用が判明し、原告は2010年に商標権侵害訴訟を提起しました。しかし、連邦地裁は故意の侵害ではないことを理由に損害賠償請求を否認し、控訴裁判所もこれを支持したため、原告は最高裁へ上告しました。

■米国の損害賠償に関する規定(米国商標法35条(a))
米国商標法は損害賠償について以下の様に規定しています。

「登録商標の権利侵害、第1125条(a)項もしくは(d)項に基づく侵害、または第1125条(c)項に基づく故意の侵害が成立する場合、原告は衡平法の原則に従うことを条件として、(1)被告の利益、(2)原告が被った損害の賠償…を回収する権原を有する」(下線筆者)

この条文は「混同を生じさせる表示をした者及びサイバースクワッティング行為をした者(第1125条(a)(d))」及び「故意に商標を希釈化した者(第1125条(c))」に対し損害賠償請求ができると書かれており、「希釈化」以外の行為に関する損害賠償の要件としては「故意」を要求していないと読めます。しかし、それでも多くの控訴裁判所は、(1)の「被告の利益」を原告の損害とみなすという厳しい措置を正当化するためには、「衡平法の原則」に従えば、被告の故意の立証が必要であると判断してきました。

■最高裁判決の内容
最高裁は、条文は文言通りに解釈すべきであるとの立場から、「被告の利益」を原告の損害とみなすために故意性は非常に重要な考慮事項であるが、絶対的な前提条件ではないと判断しました。

■今後への影響
今回の判決によって「故意」が立証できないことを理由に、「被告の得た利益」の賠償請求が一律に否認されることはなくなると思われます。この点で、権利者側にとっては有利な判決です。

とはいえ、今回の最高裁判決は、故意性は「絶対的な前提条件ではない」と述べたにとどまっており、引き続き「非常に重要な考慮事項」とも判示されています。

「故意性の有無」は賠償額の算定における判断要素などとして機能すると思われますので、損害賠償請求においては依然として被告の故意の証明は重要であることに変わりはありません。

【出典】
SUPREME COURT OF THE UNITED STATES「Romag Fasteners, Inc. v. Fossil, Inc. et al., Case No. 18-1233」(PDF)等

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