1 はじめに
本稿では、本年(令和2年)の著作権法改正の要点を説明します。今回の改正は複数点にわたりますが、主たる改正点は、インターネット上の海賊版対策の強化に関するものです。必ずしも企業活動において問題となることが多い規制ではないかもしれませんが、世の中の耳目を集めたリーチサイトの規制及び違法ダウンロードに関するものであり、社会的にも関心が高いところですので、この点について、「何がダメになったのか」について、要点をお伝えいたします。

2 インターネット上の海賊版対策の強化
「漫画村」のニュースについてご記憶の新しい方も多いのではないでしょうか。文部科学省の資料(参考文献1)によれば、漫画村の影響により、約3,000億円分の出版物がタダ読みされた計算であり、漫画家・出版社の収入・売上が20%減ったという試算もあるとされています。漫画村のウェブサイトでは、アクセスにともなって広告が表示され、それによりサイト運営者に広告料が入る仕組みになっており、この点がウェブサイト運営の動機付けになります。

しかしながら、コンテンツを無料で配布されてしまうと、クリエイターが収益を得る機会を失ってしまいます。「あなたが創ったコンテンツの多くは無料で配信されてしまいますので、ほとんど稼ぐことができませんが、いいコンテンツを創ってください」というのは無理な話であり、そのような状況が放置されてしまうと、クリエイターが投資を回収する機会がなく、持続的な活動をすることができなくなってしまいます。そうすると、新しいコンテンツは生まれてこなくなり、ひいては日本文化に負の影響が及びます。

著作権法の目的は「文化の発展」(第1条)ですから、こうした現状を変えるべく、今回の法律改正がなされました。主たる点は、①リーチサイト対策と、②違法コンテンツのダウンロードの違法化・刑事罰化です。すなわち、①違法なコンテンツへ誘導するリーチサイトの運営行為や、違法なコンテンツへのリンク情報を掲載する行為を規制することにより、違法なコンテンツが提供されないようにするとともに、②違法なコンテンツ(著作物全般)を、そうと知りながらダウンロードする行為を規制することにより、違法コンテンツを提供する側・提供される側の双方を規制の対象としました。この点、違法なアップロード行為を厳格に取り締まればよく、ダウンロードを行うユーザーまで規制する必要はないのではないか、という議論もありましたが、アップロード者が特定できなかったり海外にいたりする場合もあり、また、ダウンロードが見込まれるからこそアップロードがなされるのであって、ダウンロード行為はアップロードの助長になっているという側面もあることから、ダウンロード行為も規制の対象となっています(参考文献2)。

多くの方々にとっては、違法なリーチサイトをうっかり運営してしまったということは稀と思いますので、ダウンロード行為のほうがイメージしやすいかもしれません。

違法コンテンツのダウンロードに関しては、以前から、音楽・映像については違法とされていました。今回の法改正では、音楽・映像に加えて、漫画、書籍、論文、コンピュータプログラムなど、著作物全般のダウンロードも規制対象になり、この点が新しいところです。もっとも、近時、インターネットからコンテンツをダウンロードすることは国民にとって日常の行為といえます。違法の対象が急に拡大すると、国民が過度に委縮してしまって、本来適法なダウンロードも控えてしまうということにもなりかねません。そうすると、逆に文化の発展が妨げられることにもつながります。そこで、今回の法改正では、例えば客観面として、漫画の1コマ~数コマなど「軽微なもの」や、二次創作・パロディは対象外とされました。また、主観面として、違法にアップロードされたことを「知りながら」ダウンロードする行為が対象であり、重過失(ちょっと注意すれば分かっただろうこと)によって違法アップロードであることを知らなかった場合は対象外、ということになりました。文化を発展させるという観点から、上記要件を加えることでバランスをとったといえます。

3 おわりに
現代は一億総クリエイター時代と言われる時代です。コンテンツの消費者であるとともに、クリエイターにもなりえます。著作権制度は早いスピードで改正され続けています。クリエイターと消費者の双方にとって、心地よいルール整備を今後も続けていかなければなりません。

 

【参考文献】
・文化庁「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律 御説明資料
・文化庁「侵害コンテンツのダウンロード違法化に関するQ&A(基本的な考え方)」(PDF)

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