1  「実施ガイド」の公表
会社法上の文言から、株主総会の会場に株主を入れない完全にバーチャルな形での株主総会は行い得ないとされている。しかし、従来、会場におけるリアルな株主総会を開催するという前提の下で、オンラインでの株主の参加も可能とするいわゆる「ハイブリット型バーチャル株主総会」については、オンライン参加する株主にリアル会場での株主総会に出席する株主と同等の権利が認められ、オンライン出席する株主を含めた出席者の間で情報伝達の即時性・双方向性が担保されるという条件の下で適法と考えられてきた。しかし、多くの会社において、株主総会の運営は、決議の取消事由があるとして訴えが起こされることのないよう慎重に行われており、オンライン参加する株主にリアル会場に出席すべき株主と同じ権利を認めているというためにはどのような措置を講じれば足りるのか必ずしも明らかでない状況の下では、オンライン参加を可能とするハードルは低くなかった。

そこで、今年2月、経済産業省の部会により、「ハイブリット型バーチャル株主総会の実施ガイド」が公表されるに至り、この中では企業がハイブリッド型バーチャル株主総会を実施するに当たり問題となりうる法的・実務的な論点が示されるとともに、望ましいと思われる対応が「具体的取扱い」として提示されている。

2  「実施ガイド」のポイント
実施ガイドは、オンラインによる株主による株主総会への参加が会社法上の「出席」と扱われるか否かによって「参加型」と「出席型」に類型を分けて検討を行っている。「参加型」の場合には、株主は開催場所における株主総会の模様を視聴するものの、あくまで株主総会に「出席」したとして扱われるものではないため、オンラインで参加する株主が議決権行使をしようとする場合には事前に書面又は電磁的方法によって行使しておくことになる。この類型は、実質的には株主総会の模様を配信して会場に出席していない株主への情報提供を行っているにとどまるため、重大な法律問題が生じることは考えにくい。

これに対して、オンラインでの株主の関与を、法的にも株主総会に「出席」していると扱う「出席型」においては、開催場所と株主との間で情報伝達の双方向性と即時性が確保されていることが必要とされる。一方で、現行の実務が株主や取締役等が物理的な会場に一堂に会して実施される会議体を前提としているためにオンラインでの出席で同様に扱うのが困難な点(通信障害により審議に参加できない事態の発生や、会社の合理的な努力で対応可能な範囲を超えた困難が生じると判断される場合に動議については開催場所において出席する株主からのものを受け付けるという取扱いなど)については、株主総会の開催場所へ実際に臨むという方法に加えて、会社がオンラインでの出席という選択肢を追加的に提供するものであるという性質を踏まえ、株主総会において株主に認められた諸権利の行使に係るリアル株主総会との違いについて、事前に説明を行うなど適切な対応を行った上であれば、開催場所へ実際に臨む株主との取扱いの差異を一定の範囲で適法とするとの方針を示している。

3  通信障害と決議取消事由
上述のように、ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施に当たっては、開催場所と株主との間で情報伝達の双方向性と即時性が確保されている必要があることから、会社は、会社側の通信障害について予め対策を行わなければならない。

では、会社側の通信障害が発生し、その結果、オンラインで出席する株主が審議又は決議に参加できない事態が生じた場合には、法831条1項所定の決議取消事由に当たるのか。この点につき「実施ガイド」は、株主には、バーチャル出席でなくリアル出席をするという選択肢がある以上、株主がバーチャル出席を選んだ場合は、出席の機会を奪われた場合の決議取消に係る要件の充足性についても、従来の解釈とは異にする余地があるとしている。会社が通信障害のリスクを事前に株主に告知しており、かつ、通信障害の防止のために合理的な対策をとっていた場合には、会社側の通信障害により株主が審議又は決議に参加できなかったとしても、決議取消事由には当たらないと解する可能性が示されているのである。

4  結語
「実施ガイド」の公表により一定の指針が示され、令和元年会社法改正では株主総会資料のIT化について定められたこと、また感染予防対策としても有用であることから、今後バーチャル形式を併用した株主総会の実施はさらに増えていくものと思われる。

〈参考文献〉
厚生労働省「ハイブリット型バーチャル株主総会の実施ガイド
ジュリスト2020年8月号(No.1548) 16頁「ハイブリット型バーチャル株主総会」澤口実

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