皆さまご存知のことかと思いますが、PTA(Patent Term Adjustment)とは、米国特許庁による審査手続きが遅延することによって、特許の発行が遅れた場合に、存続期間を特許発行が遅れた分延長する制度です(35U.S.C.154(b))。

特許(実用特許)の権利存続期間は特許出願日から起算して20年と規定されていますので、審査に時間が掛かってしまうと、その分、存続期間が短くなってしまいます。そのため、特許権者が所定以上の存続期間を得らえるように調整する規定が、PTAですよね。

このPTAですが、意匠(意匠特許)には適用がありません。

なぜならば、米国の意匠権の存続期間は、登録日から起算するためです(35U.S.C.173)。つまり、審査が遅延しても意匠は法に規定された存続期間を侵食されることがないため、調整の必要がないのです。

この点は、MPEPにも明記されています。

[MPEP2710抜粋]
Since the term of a design patent is not affected by the length of time prosecution takes place, there are no patent term adjustment provisions for design patents.

PTAから話は逸れますが、米国意匠制度において、存続期間が登録日起算であることは、非常に大きなポイントです。なぜかというと、継続出願に係る意匠権であっても、存続期間は登録日から起算されるため、親出願の意匠権満了よりも後に満了する権利を作ることができるからです。

話をPTAに戻します。前述のように、「意匠にはPTAなんて関係ない」という感じなのですが、非常に稀なケースですが、意匠の存続期間にPTAが影響を与える場面が考えられます。それは、意匠出願において実用特許との間でダブルパテンティングの拒絶が掛かり、ターミナルディスクレーマーを行った場合です。この場合、意匠の存続期間は実用特許の存続期間を超えることはできませんが、実用特許においてPTAがなされれば、意匠の存続期間もこれに応じて延長されることになります。実用特許と意匠特許との間でダブルパテンティングの拒絶がなされることはめったにないことでして、私も実際の案件でお目に掛ったことはないのですが、理論上はあり得るということで、最後に書かせて頂きました。

※この記事は一般的な情報、執筆者個人の見解等の提供を目的とするものであり、創英国際特許法律事務所としての法的アドバイス又は公式見解ではありません。