米国では、特許の実施品に特許表示をしなかった場合には、特許権者は損害賠償を受けることができない(特許法287条)。特許についてライセンスしている場合は、実施権者が特許表示を怠ってしまうと同様に損害賠償を受けることができない。ただし、侵害者が侵害について警告を受けており、その後も継続して侵害を続けた場合は、警告以降の侵害については損害賠償を受けることができる。侵害訴訟の提起は、警告と同等とみなされる。

なお、方法特許の場合や、物の特許の場合でも製品を製造していない場合は、そもそも特許表示できないためこの制限を受けない。

Packet Intelligence, LLC v. NetScout Systems, Inc.[2019-2041](2020年7月14日判決)では、このような特許表示がされていない場合の損害賠償について、争点の一つとして争われた。

連邦巡回控訴裁判所では、一審の地裁判決を覆し、本件特許6,954,789号の実施権者がその製品である
“MeterFlow”に特許表示を付さなかったことを理由として、訴訟提起前の損害賠償(350万ドル)は認められないと判決を下した。

特許権者であるPacket Intelligenceは、特許法287条に規定された特許表示の要件を逃れるため、実施権者の製品である“MeterFlow”が当該特許を実施していないことを立証しようとしたものの、立証が不十分とされた。

また、特許権者は、特許表示の要件が課されない方法発明に関する特許である特許6,665,725号および特許6,839,751号に基づいて、訴訟提起前の損害賠償を正当化しようと試みたものの、裁判所は「その方法を実施できる装置を販売したからと言って、その方法特許が侵害されたことにはならない」として、789特許を侵害するソフトウェアの販売を、725特許および751特許の方法の販売とみなすことができず、損害の立証が十分でないと判断した。今回の事件のように、米国では物の発明に関する特許について、実施品に特許表示がなされていないと、原則として損害賠償を受けることができない。これは特許権者のみならず実施権者にも同様に適用されるため、ライセンスを付与する場合は、実施権者との契約の中で特許表示義務を課すべきである。また、実施権者が契約に従って特許表示を実行しているか否か、定期的にチェックすることも重要である。

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