2020年9月10日から14日にかけて、中国最高人民法院は知財に関する五つの司法解釈を公表し、施行した。

これらの司法解釈は、人民法院が知的財産権に関する事件を適正に処理するために制定されたものであり、施行後に提起される訴訟だけでなく、既に人民法院に係属している一審、二審にも適用される。各司法解釈の注目点は下記の通りである。

1.専利権利化・権利確認行政事件1の審理における法律適用の若干問題に関する規定(一)

〇クレームの用語解釈(第2条、第3条)
人民法院は、クレームの用語解釈にあたっては、明細書等の記載に従うことを原則としつつ、明細書等の記載によって解釈できない場合には、辞書や標準規格等を参酌可能であることが明確となった。

また、無効審判の審決取消訴訟におけるクレームの用語解釈にあたっては、専利権侵害訴訟の確定判決で採用された専利権者の主張を参酌可能であるとの規定が新設された。

〇補足実験データの取り扱い(第10 条)
医薬品専利の出願人が出願日以降に補足実験データを提出し、当該補足実験データに基づき進歩性及び実施可能性等を主張する場合、人民法院はこれを審査しなければならないことが明確となった。

〇設計領域(第14条)
人民法院は一般消費者が意匠に係る物品について有する知識水準及び認知能力を認定するにあたっては、出願日時点の意匠に係る物品の設計領域(意匠創作の自由度に相当)を考慮しなければならないとの規定が新設された。

具体的には、「設計領域が広い場合には、一般消費者が意匠同士の細かい相違に注目することは困難であり、設計領域が狭い場合には、一般消費者が意匠同士の細かい相違に注目することは容易である」と認定することができるとされている。

なお、設計領域を認定するにあたっては、「物品の機能、用途」、「国家、業界の標準規格」等を総合的に考慮することができるとされている。

2.営業秘密侵害民事事件の審理における法律適用の若干問題に関する規定

〇行為保全措置(第15 条)
被申立人が営業秘密を不正に取得、開示又は使用等する行為について、人民法院は一定の要件を満たすと判断した場合に、行為保全措置を講じる決定を下すことができるとの規定が新設された。

〇不正競争防止法第17条の適用(第16条)
不正競争防止法第17条には同法の規定違反があった場合に民事責任を負うことが規定されており、主体は「経営者」となっている。しかしながら、同法の規定違反のうち営業秘密侵害については、「経営者以外のその他の自然人、法人、非法人組織」にも同条が適用されることが明確となった。

〇訴訟手続における秘密保持措置(第21条)
当事者又は訴外人の書面申請により、人民法院は営業秘密に係る証拠、資料について必要な秘密保持措置を講じなければならないとの規定が新設された。秘密保持措置の要求に違反して、営業秘密を侵害した場合、法的責任を負うと規定されている。

なお、同様の規定が、5.の司法解釈でも新設された。

3.電子商取引サイト知財民事事件の審理に関する指導意見

〇保全措置の申し立て(第9条)
状況が緊急であること及び損害の補填が困難であることを理由に、知的財産権者及び電子商取引サイト内経営者は、人民法院に以下の保全措置を申し立てることができるとの規定が新設された。

知的財産権者:商品2の撤去等
電子商取引サイト内経営者:商品3リンクの回復等

4.インターネット知財侵害紛争での幾つかの法律適用の問題に関する回答

〇懲罰的賠償(第4条)
被疑侵害者の悪意ある非侵害声明に基づき電子商取引サイト経営者が必要な措置を解除したことで知的財産権者が損害を被った場合、懲罰的賠償を適用できることが明確となった。

5.最高人民法院・最高人民検察院による、知財侵害刑事事件の取り扱いにおける具体的な法律応用の若干問題に関する解釈(三)

〇刑法第219条の営業秘密侵害罪の刑事訴追基準(第4 条)
営業秘密侵害による権利者の損害額又は侵害者の違法所得額が刑事訴追基準を超えた場合、営業秘密侵害罪の刑事訴追を受ける。従来の司法解釈では、この刑事訴追基準は「50万元」とされてきたが、「30万元」に引き下げられた。

1 専利の不服審判・無効審判の審決取消訴訟に相当する。
2 電子商取引サイトで、電子商取引サイト内経営者が販売する商品、又は電子商取引サイト自らが販売する商品である。
3 電子商取引サイトで電子商取引サイト内経営者が販売する商品である。

【出典】
中国最高人民法院「司法解釈」等

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