ドイツでは、特許権侵害訴訟における差止やダブルトラックの問題に対応すべく、特許法改正に向けて動いている。2020年1月に特許法改正の最初の草案が出され意見募集に付された後、提出された意見を踏まえて修正草案が2020年9月に出された。注目度の高い三つのポイントについて、順に説明する。

1.差止による救済の制限
現状、ドイツでは特許権侵害が認められると差止による救済が制限なく認められる。したがって、自動車やスマートフォンのような多くの部品からなる製品において、細かな一つの部品でも特許権侵害が成立すると、製品全体の出荷が止められるという重大な結果に繋がる。このような差止の脅威により、ライセンス交渉の場面では不合理なライセンス料でも受け入れざるを得ない場面も出てくる。

草案では、差止が不均衡な結果を生じる場合、すなわち特段の事情により、特許権者と侵害者の利益、及び信義則を考慮すると排他権が正当化されないと認められる場合は、差止による救済が制限される旨が規定されている。また、修正草案では実用新案権に対する差止についても同様に扱う旨が追加された。

法案が成立した場合には、裁判所がどのように運用するかは未知であるものの、少なくとも被告が差止回避の主張をする機会は与えられそうである。

2.ダブルトラックから生じる問題への対応
迅速に審理が進む侵害訴訟で差止が認められたが、その後に連邦特許裁判所で特許が無効にされたり、訂正によって非侵害になったりするといったダブルトラックの問題に対応するため、裁判所の見解書が早期に通知される。

すなわち、無効訴訟の被告への訴状送達から6ヶ月以内に、連邦特許裁判所が特許権の有効性等に関する予備的な見解書を当事者及び侵害裁判所に通知する。

無効訴訟の審理の迅速化や、侵害訴訟での訴訟手続きの中止判断の便宜を図るものである。

3.PCT出願におけるドイツへの国内移行期限の延長
PCT出願からドイツの国内段階に移行するための期限が、現状は優先日から30ヶ月であるところ31ヶ月に延長される。これにより、PCT出願から欧州出願(EP)への移行期限である31ヶ月と期間が揃うことになる。

※この記事は一般的な情報、執筆者個人の見解等の提供を目的とするものであり、創英国際特許法律事務所としての法的アドバイス又は公式見解ではありません。