1 消費者契約法
消費者契約法は、消費者が事業者と契約をするとき、両者の間には持っている情報の質・量や交渉力に格差があることに鑑みて、消費者の利益を保護するために、事業者の債務不履行等により生じた損害賠償の責任を免除する条項の全部又は一部を無効とすることを定めています。

また、消費者契約法は、少額ではあるが高度な法的問題を含む紛争が多発するという消費者取引の特性に鑑みると、個々の消費者に権利行使を期待し難いことから、同種紛争の未然防止・拡大防止を図って消費者の利益を保護するために、適格消費者団体による事業者に対する差止請求制度を定めています。

【消費者契約法3 条1 項1 号】
事業者は、次に掲げる措置を講ずるよう努めなければならない。

一 消費者契約の条項を定めるに当たっては、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が、その解釈について疑義が生じない明確なもので、かつ、消費者にとって平易なものになるよう配慮すること。

【消費者契約法8 条1 項1 号、3号】
次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。

一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項
二 (略)
三 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する民法の規定による責任の全部を免除する条項

【消費者契約法12条3項】
適格消費者団体は、事業者又はその代理人が、消費者契約を締結するに際し、不特定かつ多数の消費者との間で第八条から第十条までに規定する消費者契約の条項(第八条第一項第一号又は第二号に掲げる消費者契約の条項にあっては、同条第二項の場合に該当するものを除く。次項において同じ。)を含む消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を現に行い又は行うおそれがあるときは、その事業者又はその代理人に対し、当該行為の停止若しくは予防又は当該行為に供した物の廃棄若しくは除去その他の当該行為の停止若しくは予防に必要な措置をとることを請求することができる。ただし、民法及び商法以外の他の法律の規定によれば当該消費者契約の条項が無効とされないときは、この限りでない。

2 さいたま地方裁判所令和2年2月5日判決(平成30年(ワ)第1642 号)の事案
本件訴訟は、適格消費者団体である原告と、インターネット・ポータルサイト「モバゲー」を運営する被告との間で争われた訴訟です。本件訴訟では、原告は、被告が定めたモバゲー会員規約(「本件規約」)7 条1 項、3 項を契約条件とする被告による消費者との取引の差止めを請求しました。そのため、本件訴訟では、本件規約7条1項、3項が、被告の損害賠償責任の全部を免除する規定であり、消費者契約法8条1項1号、3号に該当するか否かが争点になりました。

【本件規約7条1項】
モバゲー会員が以下の各号に該当した場合、当社は、当社の定める期間、本サービスの利用を認めないこと、又は、モバゲー会員の会員資格を取り消すことができるものとします。ただし、この場合も当社が受領した料金を返還しません。

  1. ( 略)
  2. ( 略)
  3. 他のモバゲー会員に不当に迷惑をかけたと当社が判断した場合
  4. ( 略)
  5. その他、モバゲー会員として不適切であると当社が判断した場合

【本件規約7条3項】
当社の措置によりモバゲー会員に損害が生じても、当社は、一切損害を賠償しません。

3 裁判所の判断(本件規約7 条3 項について)
被告は、①本件規約7条1項c、eの「(当社の)判断」は「合理的な根拠に基づく合理的な判断」を意味し、②利用を停止させる又は会員資格を取り消す被告の判断が「合理的な根拠に基づく合理的な判断」ではないことが判明した場合、すなわち被告に債務不履行又は不法行為があった場合には、本件規約7 条3 項は適用されないので、本件規約7 条3 項は消費者契約法8 条1 項1 号及び3 号に該当しない、③他方、利用を停止させる又は会員資格を取り消す被告の判断が「合理的な根拠に基づく合理的な判断」であった場合には、被告の債務不履行及び不法行為は存在しないことになるので、本件規約7条3項は消費者契約法8 条1 項1 号及び3 号に該当しない、旨主張しました。

これに対し、第一審判決は、「(当社の)判断」は、複数の意味に解釈することが可能であり、「合理的な根拠に基づく合理的な判断」を前提とするものと一義的に解釈することは困難であり、本件規約7条3項が免責条項として機能していることを否定できない、したがって本件規約7条3項は消費者契約法8条1項1号、3号に該当すると判断して、原告の差止請求を認容しました。

控訴審判決は、消費者契約法3条1項1号(事業者による明確化努力義務)の趣旨に鑑みて、不明瞭な被告の規約を被告に有利に(不当条項性を否定する方向で)解釈することはできない旨述べて第一審判決を支持しました。

※この記事は一般的な情報、執筆者個人の見解等の提供を目的とするものであり、創英国際特許法律事務所としての法的アドバイス又は公式見解ではありません。