本年4月1日から、複数意匠一括出願を行うことが可能になる。この制度については、名称ばかりが独り歩きしており、内容についてはあまり周知されていないように思われる。そのため、今回、制度の内容や注意点についてお知らせする。

まず、複数意匠一括出願とは、複数の意匠を1つの手続で特許庁に出願することを可能とする制度である。従来から、日本は「一意匠一出願」の原則があり、1つの意匠については1つの意匠出願を行う必要があるが、今回の複数意匠一括出願の導入によって、1つの手続で複数の意匠の出願を行うことができるようになる。

具体的な願書のイメージは、下の通りである(令和元年11月20日 第18回意匠審査基準ワーキンググループ資料11より引用)。また、この記事の執筆時点である2月下旬においては、複数意匠一括出願に対応して意匠法施行規則等を改正するための省令案が意見提出手続に付されており、この省令案からも願書の記載方法などの具体的な内容が把握できる。書類名は、省令案によれば「意匠登録願(複数)」となり、この一括出願用の整理番号を記載し、新規性喪失の例外規定の適用を受ける旨や、出願人、秘密意匠に関する記載、手数料などは、全意匠に共通するものとして一度だけ記載し、以降の欄に、【意匠1】から順番に物品名や創作者名、意匠に係る物品の説明や図面を記載するという形式である。一括出願に入れ込むための要件(物品が同一である等)は特にない。また、意匠の数の上限は100である。

一方で、今回導入される複数意匠一括出願は、分かり易く捉えると、複数の意匠出願の束を1つの手続でまとめて特許庁に提出できる制度、である。その意味では、従来の一意匠一出願の枠組みは変わらないと言える。

以上を踏まえると、以下の点に注意する必要がある。

◆意匠ごとに意匠権が発生する(従来と変わらない)。
◆実体審査は意匠ごとに行われる(従来と変わらない)。
◆庁費用は意匠ごとに発生する(従来と変わらない)。なお、複数の意匠についての庁費用の減額は無い。
◆意匠ごとに新規性喪失例外規定の適用を受けるか否かを指定できない。
◆意匠ごとに秘密意匠の請求をするか否かを指定できない。

このように、複数意匠一括出願を行うメリットは、正直なところ見出すことができない。また、この複数意匠一括出願に対して一つの出願番号が付与され、それ以外に、意匠ごとにも出願番号が付与される予定である。それぞれの番号を重層的に管理する必要が出てくるため、おそらく、複数意匠一括出願における管理負担はむしろ増大するように思える。そのため、複数意匠一括出願の利用は積極的にはお勧めできないというのが、弊所の今の所の見立てである。

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※この記事は一般的な情報、執筆者個人の見解等の提供を目的とするものであり、創英国際特許法律事務所としての法的アドバイス又は公式見解ではありません。