令和元年のいわゆる「意匠法大改正」によって、意匠法は様々な規定が改正されましたが、その多くは令和2年4月1日に施行されています。

一方、以下の規定については、令和3年4月1日から施行されています。

 

1.複数意匠一括出願手続の導入

2.物品区分の扱いの見直し

3.手続救済規定の拡充

 

今回はこれらのうち、「1.複数意匠一括出願手続の導入」についてご紹介します。

※2021年3月にも同じテーマの記事をアップしていますが、より詳細な情報と共にご紹介します。

 

■複数意匠一括出願手続とは

複数意匠一括出願とは、複数の意匠を1つの手続(願書)で特許庁に出願することを可能とする制度です。願書に記載すべき一定の情報については、複数の意匠に共通する事項として願書の1か所に記載し、それ以外の事項については、意匠ごとに願書に記載します。

すなわち、「複数の意匠出願の束を1つの願書でまとめて特許庁に出願する」、というイメージの手続きになります。

 

■願書の1か所に記載すれば、全ての意匠登録出願がこれらを記載したものとみなされる事項

・意匠登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所

・代理人の氏名又は名称及び住所又は居所

・秘密意匠を請求するための記載事項

・新規性喪失の例外適用を受けようとする旨の記載、証明書

・パリ条約に基づく優先権を主張する場合の記載事項

・出願人が意匠登録を受ける権利の信託の受託者である場合の記載事項

・共同出願において出願人の権利について持分の定めがあるなどの場合の持分割合

・共同出願において手続をするための代表者を定める届出を特許庁にしたときの記載事項

 

■意匠ごとの記載が必要である事項

・意匠に係る物品

・創作者

・意匠に係る物品の説明

・意匠の説明

・図面、写真等

 

■複数意匠一括出願を行った後のフロー

複数意匠一括出願を行うと、複数意匠一括出願に対する「手続番号」(注1)が通知され、複数意匠一括出願に対する方式審査がなされます。

また、方式審査において不備があった場合には補正指令等がなされます。

方式審査において問題が無い場合には、複数意匠一括出願の手続は「終了」し(注2)、その後は、通常通りの意匠ごとの出願の審査となります。

1つの意匠について1つの意匠権が発生する点も従来と変わりありません。

(注1)手続番号は、意匠ごとに付与される「出願番号」とは別であり、複数意匠一括出願用の番号となります。

(注2)新規性喪失例外証明書の提出をする必要がある場合には、提出可能な期間が経過するまでは複数意匠一括出願の手続は終了しません。

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特許庁ホームページ掲載、令和3年4月に施行される改正意匠法についての説明資料(https://www.jpo.go.jp/news/shinchaku/event/seminer/text/document/isho_kaisei_shiryo_2020/resume.pdf)より引用

 

■料金について

特許庁印紙代は意匠ごとに出願した場合も一括出願をした場合も同じで、16,000円×意匠になります。

 

■複数意匠一括出願を行うための要件等

複数意匠一括出願を行うための要件は、特にありません。複数の意匠が類似している必要はなく、また、同じ意匠分類に属する必要もありません。

1件の複数意匠一括出願に含められる意匠数は、最大で100になります。

 

■所感

以上を読まれて感じられた方も多いのではないかと思いますが、創英の意匠チームでは、この複数意匠一括出願制度を利用するメリットは、ほぼ無いと考えております。

新規性喪失例外手続きを受ける場合や秘密請求を行う場合に、1回の手続で複数の意匠において手続を行ったことになるというメリットはありますが、従来の個別の意匠出願でもその労力は殆ど変わりません。

また、意匠ごとの出願番号とは別に複数意匠一括出願用に手続番号が付与されたり、複数意匠一括出願用の方式審査が存在するなど、管理面では却って煩雑になりますので、総合的にはお勧めできないというのが、正直な気持ちです。(2021年3月の時に感じたところと、同じ所感です。)

以上

※この記事は一般的な情報、執筆者個人の見解等の提供を目的とするものであり、創英国際特許法律事務所としての法的アドバイス又は公式見解ではありません。