令和元年のいわゆる「意匠法大改正」によって、意匠法は様々な規定が改正されましたが、その多くは令和2年4月1日に施行されています。

一方、以下の規定については、令和3年4月1日から施行されています。

 

1.複数意匠一括出願手続の導入

2.物品の区分の扱いの見直し

3.手続救済規定の拡充

 

前回は、「1.複数意匠一括出願手続の導入」についてご紹介しました。(前回の記事はこちら

今回はこれらのうち、「2.物品の区分の扱いの見直し」についてご紹介します。

 

 

■そもそも「物品の区分」とは?

令和元年の意匠法改正前には、意匠法第7条において、『意匠登録出願は、経済産業省令で定める物品の区分により意匠ごとにしなければならない。』と規定されていました。そして、願書の【意匠に係る物品】欄には、経済産業省令である意匠法施行規則の別表第一に掲げられている物品の区分(=乗用自動車、アンダーシャツ等の物品名)か、いずれの記載にも該当しないときには物品の区分と同程度の区分を記載することになっていました。

つまり、平たく言うと、物品の区分とは、意匠に係る物品】欄に記載すべき物品の名称のことです。

 

 

■改正によって物品区分の取り扱いが見直された背景

物品の区分は、【意匠に係る物品】欄に自由な記載を認めると、審査する際の意匠に係る物品の認定が煩雑になり、また、包括的な名称で広範な意匠の出願を認めてしまうことにもつながり適当ではないため、願書に記載すべき物品の粒度(具体性の度合い)を揃えるために定められていました。

しかし、近年は多様な新しい製品が次々に登場しており、別表第一に定めた物品の区分に記載のない物品を記載した出願が多くみられました。その一方で、別表第一の区分の記載を機動的に改定することは困難でした。

そのため、経済産業省令に定められた物品の区分に当てはまらない物品であっても柔軟に出願手続きを行うことができるように、意匠法第7条を「意匠登録出願は、経済産業省令で定めるところにより、意匠ごとにしなければならない。」と改正し、物品の区分により行わなければならない、という制限を法律上外しました。ただし、「意匠ごと」と規定される客体である「一意匠」の対象が不明確となる恐れがあるため、「一意匠」の対象となる「一物品」、「一建築物」、「一画像」に該当するための基準を、経済産業省令で定めることとしました。

 

 

■経済産業省令(意匠法施行規則)で定められている基準

改正された意匠法施行規則第7条では、一物品等に該当するための基準について、次の通り規定しています。

 

意匠法第七条の規定により意匠登録出願をするときは、意匠登録を受けようとする意匠ごとに、意匠に係る物品若しくは意匠に係る建築物若しくは画像の用途、組物又は内装が明確となるように記載するものとする。

 

また、上記基準に合致する、つまり、物品等の用途等が明確となるような記載の参考になるよう、「意匠に係る物品等の例」が特許庁ウェブサイトに掲載されています。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/design/document/h23_zumen_guideline/appendix_01.pdf

 

これは、従来の別表第一をもとに、近年の意匠登録実績に応じた物品名の追加・削除等を行ったものです。

 

 

■実務上の留意点

以上のような改正・改定がなされましたが、意匠法施行規則第7条の記載だけでは、実際にはどのような願書の記載であれば、「用途等が明確」であるのか、依然としてわかりづらいです。

実際には、「意匠審査基準 第Ⅱ部第2章」に、どのような記載にすべきか詳しく記載されていますので、こちらを参照するのが良いと思います。

意匠審査基準によると、意匠登録出願が意匠法施行規則第7条の記載を満たしているか否かを判断する際には、【意匠に係る物品】欄だけではなく、【意匠に係る物品の説明】や図面等のその他の内容も踏まえて総合的に判断し、意匠登録を受けようとする意匠の意匠に係る物品等の用途及び機能を明確に認識できる場合には、当該要件を満たしたものとする、としています。

そのうえで、具体例として、以下のような例を挙げています(一部事例の抜粋です)。

 

(物品等の用途及び機能を明確に認識することができないものの例)

001

※意匠審査基準から引用。

 

この事例の意匠に係る物品は、図面を考慮しても具体的に何に使うのか、どのように使うのか等が不明であり、用途及び機能を明確に認定することができないとされています。

 

(物品等の用途及び機能を明確に認識することができる例)

002

※意匠審査基準から引用。

 

この事例に関しては、従来の物品の区分に当てはめれば「短靴」になると考えられます。しかし、意匠に係る物品の記載及び図面を総合すると、短靴という用途・機能は明確ですので、意匠が具体的なものとして認められることになっています。

 

 

 

 

■所見

以上の通り、物品の区分の扱いの見直しについてご説明してきましたが、意匠出願の実際の場面では、改正法下においても従来のやり方からあまり変わらないと感じています。従来も、一覧表に載っていない物品についての出願は多く行われていまましたし、そのような場合には、意匠に係る物品の説明に使用状態や使用方法について記載したり、使用状態を示す参考図などを提出することにより、物品の用途や機能が明確になるようにしていました。

改正法下においても、従来通り、物品等の用途や機能が明確になるように、意匠に係る物品の説明や図面を作成することが大事であると考えます。

以上

※この記事は一般的な情報、執筆者個人の見解等の提供を目的とするものであり、創英国際特許法律事務所としての法的アドバイス又は公式見解ではありません。