2021年2月及び4月、中国最高人民法院は、知財訴訟に関する年次レポートを公表しました。以下、簡単にご紹介します。

●2020年最高人民法院知識産権法廷年次レポート(2021年2月26日公表)
このレポートには、2020年に最高人民法院知識産権法廷(以下「最高裁知財法廷」)が取り扱った案件に関する統計や判決動向等が纏められています。表1に示していますが、受理件数、結審件数及び上訴成功率は、対前年比で増加しています。また、平均審理期間は長くなっているものの、裁判官一人当たりの平均結審件数は増加しているようです。例えば上訴成功率や平均審理期間は、今後の最高裁知財法廷における案件の対応時に有用な参考情報になると考えられます。

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また、同レポートには、営業秘密の侵害が悪意によるものだったと認定され、懲罰的賠償が適用された判決例が挙げられています。この判決例では、損害賠償額は3000万元(日本円で約5億1千万円※1)となっていますが、注目すべきポイントは、この判決は最高裁知財法廷での懲罰的賠償に関する初判決であって、不正競争防止法に規定された懲罰的賠償の上限である通常の損害賠償額の5倍を適用した点です。 

●2020年中国法院知識産権司法保護状況2021422日公表)
 このレポートには、2020年に中国の全法院が取り扱った知財案件に関する統計や傾向等が纏められています。表2に、一審の受理件数及び結審件数を示しています。多元的な紛争解決メカニズム(調停等)により訴訟段階前に紛争が解決されるようになってきていることに加え、新型コロナウィルス感染症の影響といった案件数の減少に繋がる要因があったものの、それでもなお対前年比+10%前後の増加となっている点が特徴的です。

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また、同レポートには、商標権の侵害が悪意によるものだったと認定され、懲罰的賠償が適用された判決例が二つ挙げられています。これら二つの判決例では、改正前の商標法に規定された懲罰的賠償の上限である通常の損害賠償額の3倍が適用されて、それぞれ5000万元(日本円で約8億6千万円※1)、及び3055万元(日本円で約5億2千万円※1)といった高額の損害賠償額が確定されています。このように、従来に比べて権利者に有利な損害賠償額が認められてきています。なお、現行商標法(2019年11月1日施行)では、不正競争防止法の規定と同様に通常の損害賠償額の5倍が懲罰的賠償の上限となっています。

※1 本稿執筆時点(2021年6月)の為替レートで換算

【出典】
中国最高人民法院「2020年最高人民法院知識産権法廷年次レポート」「2020年中国法院知識産権司法保護状況

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