チリ共和国では現行の知的財産法(法律第19.039号)の改正法(以下、「新しい知的財産法」といいます。)が2021年7月5日付け公式官報の掲載から6か月後に発効されます。

新しい知的財産法では、商標、特許、意匠、営業秘密、地理的表示、原産地の表示、等に関する法律の改正とともに、仮特許、非伝統的商標、等の新しい規定が導入されます。

チリにおける新しい知的財産法の概要を以下で紹介します。

(1)仮(暫定)特許
特許性の評価やその商業的拡張性等の側面がイノベーション保護のブレーキとならないように、12か月間暫定的に認められます。

(2)特許に係る侵害訴訟
発明の正当な所有者は、特許を取得する権利を持たずに特許を取得した者を訴えることができ、発明の正当な所有者はこの者に対し特許権の譲渡を請求し、それに対応する損害賠償をも請求することができます。

(3)特許出願の追加手数料
80枚を超える特許出願には追加手数料(追加の20枚に対してUSD70程度、等)の納付が要求されます。

(4)意匠の保護期間
出願日から数えて、これまでの10年の保護期間が、15年に延長されます。

(5)意匠の審査
実体的な審査を必要としない意匠登録手続を選択することが認められます(紛争が生じた場合には実体的な審査が後に要求される場合があります。)。

(6)非伝統的商標
3次元商標、嗅覚商標、触覚商標、位置商標、ホログラム商標、及び動的商標、等のいわゆる「伝統的ではない」商標の登録が可能になります。

(7)商標の不使用による措置
商標について登録付与日から5年以内に国内で実際の効果的な使用がなく、登録された製品又はサービスの通常の指定となった商標がその独自の能力を失った場合には、登録の取消しを求めて訴えられる場合があります。

(8)商標偽造犯罪と新しい補償システム
商標偽造に対する罰則が強化され、初めての商標偽造に対しては最大3年の懲役刑に罰せられます。

また、侵害の重大性に応じて決定された1回の補償(上限あり)を損害賠償に代替することを可能とする補償システムが設けられます。

(9)商標権の制限
他人の商標の特定の使用が合法的に可能となります。具体的には、商標所有者の権利は、その名前が消費者を誤解させたり混乱させたりする可能性がない限り、取引の過程で、その商標所有者の名前/仮名又はその商標所有者の前任者の名前をビジネスで使用できるようになります。

また、地理的概念、一般的概念、又は説明的概念を組み込んだ商標の所有者は、その目的が当該製品又はサービスの地理的原産地、ジャンル、又はその他の説明的特徴に関する情報を提供することである場合には、当該概念の使用を妨げることができなくなります。ただし、これが再び公衆の間で誤り又は混同を生じさせる場合は、この限りではありません。

(10)商業施設及び工業施設の商標の排除
商業施設及び工業施設の商標を登録する可能性が排除され、商品及びサービスの商標のみが登録されることになります。したがって、リニューアルを求める施設の商標の所有者は、当該商標を商品又はサービスの商標として維持することになります。

(11)営業秘密の概念の拡張
営業秘密の概念が、人の管理下にある生産、商業、工業活動に使用できる全ての非公開情報に、拡張されます。

【出典】
チリ工業所有権庁「Publican en el Diario Oficial Ley Corta de INAPI que moderniza la norma vigente en propiedad industrial
チリ工業所有権庁「Proyecto de ley corta de INAPI concluye exitosamente su tramitación ante el Congreso
チリ工業所有権庁「El registro de marcas en la nueva Ley de Propiedad Industrial chilena
世界知的所有権機関(WIPO)「中南米の知財財産概況

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