1.事件の概要
本田技研工業株式会社(以下、「原告」という。 )は、自己の商標権侵害は成立しないと判断された雲南省高級人民法院判決(2017)第800号を不服として、重慶恒勝鑫泰貿易有限公司及び重慶恒勝集団有限公司(以下、「被告」という。)を被申請人として、最高人民法院に再審を請求した。

最高人民法院は、OEM商品に付された商標は、関連する公衆に対して商品の出所を識別する機能を果たす可能性があり、経済のグローバル化の中、OEM製品が中国市場に逆輸入の可能性や海外旅行の中国消費者が誤認する可能性を理由に、被告の行為は原告の商標権侵害に該当すると判断した。

2.経 緯
(1)背 景
原告は、中国で第12類の「自動車、オートバイ」等について、以下の3つの商標権を保有している。

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旧法下の登記商標「HONDAKIT」の権利者と販売契約を締結し、製造したオートバイの組み立て部品キットをミャンマーに輸出しようとしたところ、雲南省の瑞麗税関は、これらが原告の商標権を侵害する疑いがあるとして、輸出品を拘留した。税関の通報を受けて、原告は提訴した。

(2)一審・二審訴訟
一審では、被告の行為が原告の商標権を侵害するものと認め、被告に侵害行為の停止及び30万人民元(約480万円)の損害賠償金の支払いを命じた((2016)雲31民初52号民事判决)。被告は第一審の判決を不服として控訴した。

二審では、被告の行為は、いわゆる「OEM生産」に該当するため、中国での商標の使用に該当しないとして、原告の商標権の侵害にならないとの判決を下した。

3.最高人民法院の判断
最高人民法院は、以下の争点の認定をもとに二審判決を取り消した。

争点1:OEM生産に該当するか否かについて
最高人民法院は、二審のOEM生産に該当するとの認定を認めた。

争点2:商標の使用行為に該当するか否かについて
商標法第48条では、「商標の使用とは、商品、商品の包装若しくは容器及び商品取引書類上に商標を用いること、又は広告宣伝、展示及びその他の商業活動中に商標を用いることにより、商品の出所を識別するための行為をいう。」と規定している。

そこで、「商品の出所を識別するための行為」とは、商品の出所識別機能を果たし得ることと、商品の出所識別機能を実際に果たすことの両方が含まれる。

また、商標の使用行為は商標上の使用に該当するか否かについては、商標を物理的に貼り付ける行為や商品の市場流通状況などの行為を全体的に捉える必要がある。

したがって、製造または加工された製品についての商標の使用は、それが商品の出所を識別させる可能性がある限り、商標と認識すべく、商標法上の「商標の使用」に属すると認めるべきである。

商標法上の関係公衆には、侵害品の消費者に加えて、侵害品の広告や販売に関連する事業者も含まれるべきところ、本件において、侵害品の輸送などの関連事業者がこれらを接触する可能性がある。また、電子商取引やインターネットの発達により、侵害品が外国に輸出されたとしても、再び国内市場に戻ってくる可能性がある。さらに、中国経済の発展に伴い、中国の消費者が外国に旅行し、消費する人も多い中、「OEM商品」に接触し、混同をする可能性もある。

二審では、被告のオートバイの組立キットは、いずれも輸出するものであり、中国市場の「商業活動」に関わるものではなく、中国国内の関連公衆が同製品に触れることはないとして、被告の行為は中国国内での商標の使用行為に該当しないとの判断は、事実認定及び法律適用に誤りがある。

争点3:商標権侵害に該当するか否か
商標権の侵害について、商標法第57条第2号は、「商標登録者の許諾を得ずに、同一の商品にその登録商標と類似の商標を使用し、又は類似の商品にその登録商標と同一若しくは類似の商標を使用し、容易に混同を生じさせること」と規定している。

中国経済は経済発展のグローバル化が浸透しており、経済発展方式の変化に伴い、OEM生産に関連する商標権侵害に関する紛争解決に対しても変化している。ある種の貿易方式(例えばOEM 生産)を、単純に「商標権侵害に該当しない」と固定化すべきではない。

被告は、ミャンマー企業から商標使用ライセンスを得ているため、中国の商標権侵害にならないと主張している。この点、中国では、外国の登録商標に基づく専有権は享受できず、その外国の商標権者から許可を受けた者も、中国の商標法が保護する権利を有しない。これらは中国の商標権の侵害に成立しないという抗弁事由にならない。

したがって、二審人民法院が、「被告が対象製品を製造することはミャンマーの商標権者の合法的ライセンスを得ている」との認定に法律適用に誤りがある。

本件では、被告の製品に「HONDAKIT」の文字及び図形を使用し、また、「HONDA」部分を大きく突出させ、「KIT」部分を小さくし、同時に「H」の文字及び羽翼形状に類似する部分を赤色で表示しているため、原告の登録商標と同一又は類似の商品について、原告の登録商標と類似する商標を使用している。かかる行為は、関係公衆の間で誤認混同を生じさせるおそれがある。

以上のとおり、被告の行為は、原告の商標権を侵害するものである。 第一審では、30万元の損害賠償金の支払いについて、原告は再審請求しなかったため、それを維持する。

4.判決後
本案は「2019年中国法院10大知識産権案件」として取り上げており、現在のOEMの実務では、商標権侵害と判断される傾向が続いているようです。

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