【事件概要】
この事件は、特許無効審判の請求を不成立とした審決の取消判決確定後、訂正(本件訂正)を認めた上で再び無効審判請求を不成立とした審決(本件審決)の取消しを求める事案である。

知的財産高等裁判所は、審決を取り消した。

判決要旨及び判決全文へのリンク

【争点】
訂正発明2の本件訂正に係る構成「暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にする」が容易想到といえるか否か。

【結論】
…、審決取消訴訟は行政事件訴訟法の適用を受けるから、再度の審理ないし審決には、同法33条1項の規定により、上記取消判決の拘束力が及び、この拘束力は、判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたるものであるから、取消判決の上記認定判断に抵触する認定判断をすることは許されず(最高裁第三小法廷判決平成4年4月28日判決・民集46巻4号245頁参照)、その審判を不服とする審決取消訴訟においても、これを前提に判断されるべきことになる。

…、本件審決は、…、本件訂正により訂正発明2に加わった構成である「暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にすることを特徴とする」点を同相違点に加えた。

以上の経緯を踏まえると、訂正発明2の進歩性の判断に関しては、…、さらに、「暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にする」という訂正発明2の構成が容易想到といえるかについて判断されるべきことになる。

…、甲1及び甲2に接した当業者は、甲1発明において安定した濃度の殺菌ガスを発生させるとともに、十分に保証可能な殺菌効果を得るために、甲2記載の被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度、湿度、温度をそれぞれ所定の値に制御し、かつ、被殺菌空間の室圧を一定に保つための構成を適用する動機づけがある。

…、甲1発明に甲2に開示された事項を適用するに当たり、被殺菌空間の状況や目的を踏まえ、こうした周知技術ないし技術常識を参酌して、甲2の被殺菌空間内の圧力を陰圧で維持することも当業者であれば容易に想到し得たものということができる。

【コメント】
被告は、甲2における庫内差圧を陽圧制御から陰圧制御とすることには阻害要因がある旨主張したが、裁判所は、「甲2には、室圧調整装置により室内の圧力を陽圧力(10~20Pa)に維持する態様についての記載はあるものの、それはあくまで発明の実施形態の1つとして記載されているにすぎず」、甲2に係る装置の「技術的意義からすると、甲2の室圧調整装置において庫内差圧を陰圧に制御することに阻害要因はない」として、被告の主張を採用しなかった。

※この記事は一般的な情報、執筆者個人の見解等の提供を目的とするものであり、創英国際特許法律事務所としての法的アドバイス又は公式見解ではありません。