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[特許/欧州] 欧州単一特許制度の基礎知識(3)

既報(1)では下記のセクションのうち1と2、既報(2)では下記のセクションのうち3-5を解説しました。今回は6と7を解説いたします。

1.欧州単一特許制度の概要
2.単一特許の概要
3.統一特許裁判所の概要
4.欧州単一特許制度の開始時期
5.サンライズ期間までの検討事項
6.オプト・アウトの検討に関するまとめ
7.審査が最終段階に達した欧州特許出願に対する経過措置

6.オプト・アウトの検討に関するまとめ
(1)従来型欧州特許についての確認点は?
(a)自己の「従来型欧州特許」ポートフォリオ
・どの国で有効化(バリデーション)しているか?
・有効化した国におけるビジネスで重要か?
・存続期間は?満了まで維持するか?
・各国の権利者は誰か?共有でありオプト・アウトするなら共有者全員から同意書及び委任状(必要に応じ)を得る
・各国裁判所での訴訟の有無は?
・ライセンス(特に独占的ライセンス)の有無は?

(b)ライセンスを受けている「従来型欧州特許」
 自己の実施を守るための「傘」が、UPCの判断により一元的に消滅する可能性があります(セントラルアタック)。特許権者(ライセンサー)の方針を確認することはリスク評価等のために有用です。

(2)従来型欧州特許のオプト・アウト方針は?
(a)オプト・アウトしない(オプト・イン)
 特許の有効性が高い場合、有力な選択肢です。

 オプト・インがデフォルトなので、特別な手続は不要です。オプト・インすれば、一元的にUPCに侵害訴訟の提起が可能となるメリットがあります。一方で、UPCで特許無効になると一元的に権利が消滅するデメリットがあります。

(b)オプト・アウトする
 UPCの運用を様子見する場合や、一元的な特許無効を回避する場合は好適な選択肢です。

 オプト・アウトを選択した場合、後で再度オプト・インすることは可能です。ただし、各国裁判所で先に訴訟提起があると、その後オプト・インはできません。UPCでの一元的な審理を避けるため、意図的に各国裁判所で先に訴訟提起をしてくる者が出てくる可能性があります。したがって、オプト・アウトを選択した場合には、オプト・インのタイミングを慎重に判断する必要があります。

 なお、再度のオプト・イン後に再度オプト・アウトすることはできません。

(3)誰がオプト・アウト申請するか?
 オプト・アウトは、UPCのCase Management Systemからオンラインで申請できます。特許権者自身だけでなく、欧州弁理士も申請できます。また委任状があれば年金管理会社など第三者も行うことができます。

 オプト・アウト申請には庁費用は不要ですが代理人費用は必要ですので、誰が申請するかの検討も必要です。

7.審査が最終段階に達した欧州特許出願に対する経過措置
 欧州特許庁は、審査が最終段階に達した欧州特許出願に適用可能な2つの経過措置を導入することを発表しました。

(1)事前の単一特許(UP)の請求

 単一特許の請求は、特許付与の公告日がUPCの本格運用開始日以降の欧州特許を対象としていますが、ドイツがUPCAの批准書を寄託した日に既に許可予告の通知(71条(3))が発行されている出願については、その日からUPCの本格運用開始日まで、「事前の単一特許の請求」が認められます。

(2)特許付与決定の発行遅延の請求

 既に許可予告の通知(71条(3))が発行されているものの明細書テキストを承認していない出願については、ドイツがUPCAの批准書を寄託した日から「特許付与決定の発行遅延の請求」が認められます。これにより、UPCの本格運用開始の前に特許公告されていたであろう欧州特許について、特許公告のタイミングをUPCの本格運用開始の後に遅らせることができ、単一特許による保護を受けることが可能になります。

おわりに
 欧州単一特許制度の導入により、単一特許という特許取得の新たな選択肢が提供され、また統一特許裁判所という新たな紛争解決手段が提供されます。単一特許については自身にはメリットが無いと判断すれば利用しなくて済むものの、統一特許裁判所は既に特許された、また今後取得する従来型欧州特許にも影響を及ぼします。

 制度のメリット・デメリットを十分に理解し、戦略的に活用していただけるよう、弊所では今後も最新情報を入手分析して情報発信して参ります。何かお困りごとがありましたら、ご遠慮なくご相談いただければと思います。

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