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商品「中央に穴があいたクッション」の包装箱やカタログに「ドーナツクッション」と表示して販売等する行為は、商標的使用にあたらないと判断された事例(東京地裁平成21年(ワ)第25783号販売差止等請求事件)

 商標権侵害訴訟において、出所表示機能の有無により侵害の成否を判断するという裁判例は、古くは「テレビまんが事件」(東京地裁昭和53年(ワ)第255号)、「POS事件」(東京地裁昭和62年(ワ)第9752号)、近年では「尿素ヒアルロン酸化粧品事件」(東京地裁平成15年(ワ)第28645号)など複数が散見されますので、目新しいものでありません。
しかし、どのような使用態様にすれば商標的使用であるとの認定を免れ、侵害リスクを減らせるかという視点に立った場合、この裁判例も多くの示唆を与えてくれます。

本件は、登録商標「ドーナツ」(第20類「クッション」等)を有する寝具の老舗メーカー・西川産業(原告)が、中央に穴があいた低反発性のクッションを「ドーナツクッション」と称して販売していたテンピュール・ジャパン(被告)に対し、商標権侵害(および不正競争防止法違反)を理由に訴えたという事案です。

原告は、被告テンピュール社が、当該商品の包装箱やカタログの比較的目立つ位置に「ドーナツクッション」と表示して販売等する行為は、「商品名」としての使用であり、商標的使用にあたると主張しました。

裁判所は、「形式的には商標法2条3項各号に掲げる行為に該当するとしても、出所表示機能を果たす態様で用いられているといえない場合には、商標的使用にあたらない」としたうえで、以下のように判断しました。

<裁判所の判断>

被告による「ドーナツクッション」の文字の使用は、

① クッションのイメージ図や説明文とともに表示されている、

② 著名なハウスマーク「テンピュール®」とともに表示されている、

③ 「ドーナツクッション」の語自体、「中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状のクッション・・・」なる観念が生じる(識別力が弱い)ことから、

これに接する一般消費者は、商品の形状を表すために用いられたものと認識する。

よって、出所表示機能を果たす態様で用いられているとはいえず、商標的使用にあたらない(原告敗訴)。

<コメント>

本件は、特に、②の「テンピュール®」が打ち消し表示としてうまく機能したケースと思われますが、裁判所がその他の要素をも詳細に認定したうえで「出所表示機能を果たす態様で用いられているとはいえない」と結論づけているところを見ますと、決して“著名なハウスマークとともに使用すればOK”ということにはならないことがわかります。

被告としては、少し調べれば、原告が登録商標「ドーナツ」を保有・使用している事実を確認できたはずであり、そうであれば、原告の登録商標に抵触しないよう「ドーナツ形クッション」や「ドーナツ状クッション」のような形で使用するという選択肢もあったと思います。

企業によって商標リスクに対する考え方や対応方法はさまざまですが、本件の場合、よほど「ドーナツクッション」の語に思い入れがない限り、別の語を採択し、訴訟リスクを回避してもよかったのではないでしょうか。

以上

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