[商標/タンザニア]タンザニア控訴裁判所が、ARIPO商標登録はタンザニア国内において無効であり、権利行使できないと認定
2025年9月26日、タンザニア控訴裁判所は、Lakairo Industries Group Co. Ltd & Others v. Kenafrica Industries Ltd & Others事件(Civil Appeal No. 593 of 2022)の第2審において、同国におけるARIPO(アフリカ広域知的財産機関)商標登録に係る商標権の効力に関する重要な判決を下した。同判決は、タンザニアが商標に関するバンジュール議定書を批准していないことを理由に、タンザニアを指定するARIPO商標登録は、同国内で法的効力を有さず、ARIPO商標登録に基づく権利行使は認められないと判示した。
タンザニアは1999年にバンジュール議定書に加盟している。しかし、同国では当該議定書を国内法として実施する立法が行われていないことから、従来よりタンザニアを指定するARIPO商標登録の効力は不確実との見方が強かった。今回の判決により、ARIPO商標登録はタンザニア国内では法的効力を有しないことが改めて示された。
<本件侵害訴訟の概要>
本件は、原告であるケニア企業(Kenafrica Industries Ltd)が、ARIPO登録商標「Pipi Kifua」、「Special Veve」、「Orange Drops」に基づき、Lakairo Industries Group Co.,Ltd.による「Lakairo Pipi Kifua」及び「Lakairo Super Veve」の使用が商標権侵害に当たるとして民事訴訟を提起したところ、侵害が認められ、Lakairo社に差し止めと損害賠償(39億7000万タンザニア・シリング)の支払いが命じられたものである。
Lakairo社はこの判決を不服として、タンザニアがバンジュール議定書を未批准であることを理由に、当該ARIPO商標登録に基づく権利行使はできないと主張してタンザニア控訴裁判所に上訴した。なお、Lakairo社は、自社商標についてタンザニアの国内登録を有していた。控訴裁判所は、タンザニアの国内登録を有しない限り、同国内で行使可能な権利は存在しない(ARIPO登録のみでは不十分)として、上訴を全面的に認容し、原審の判決を取り消した。
<コメント>
英米法系の国においては、国際条約を締結したとしても、国内法によって裏付けられなければ効果がないとされることが多い。そのため、従来から、アフリカの一部の国において、マドプロやARIPOに加盟していても、国内法が整備されてないことからこのような条約に基づく国際出願に効力がないと判断されるリスクが指摘されていた。今回の判決は、この懸念が現実化したものである。
日本においてはARIPO出願の利用は非常に少なく、影響を受ける企業はほとんどないと思われる。一方、マドプロにおいてアフリカ諸国を指定する場合は注意が必要である。マドプロの効力が不確実とされている国があれば、国内出願が推奨される。
出典:United Trademark & Patent Services、Afriwise、CFL ADVOCATES、DarState Attorneys