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特許異議申立制度の利用状況に関する分析(2016年秋版:その2) ~申立の割合が高いIPCはC・Dセクション、取消率は無効審判の無効率より低め?~

(※2017年春時点の統計データのほか、異議の申立てがされる特許の傾向について分析した続報はこちら
(※2018年前半時点の統計データに関する記事はこちら

既報では特許異議申立について無効審判の状況と比較しつつ申立件数の推移等に関する統計を取り上げたが、本稿では他の統計を交えつつ更なる利用状況の分析を試みる。

まず、2016年8月1日までの申立件数についてIPC(国際特許分類)別の内訳は、同時期における特許の登録件数に対する割合を「申立率」として示すと下表のとおりとなっている。

<登録件数に占める特許異議申立件数の割合>

IPCセクション 異議申立 登録 申立率
A(生活必需品) 202 40,272 0.50%
B(処理操作;運輸) 171 42,738 0.40%
C(化学;冶金) 295 34,018 0.87%
D(繊維;紙) 32 2,154 1.49%
E(固定構造物) 22 7,539 0.29%
F(機械工学;照明等) 44 21,600 0.20%
G(物理学) 102 52,885 0.19%
H(電気) 133 57,229 0.23%
合計 1,001 258,435 0.39%
※異議申立は2015年4月1日から2016年8月1日までにおける権利単位の累計(出典1)、登録は2015年4月から2016年7月までのヒット件数(データベースは「ULTRA Patent」を使用)

申立率に着目するとDセクションが目立って高く、登録件数が多い Cセクションの申立率が高いことも特筆できる。その他、A及びBセクションの申立率が、全セクション合計の申立率(0.39%)を上回っている。一方、登録件数の上位であるG及びHセクションは、異議申立件数が比較的少ない。

なお、全セクション合計の申立率である0.39%は、欧州における異議申立のデータ(2013年=4.5%、2014年=4.7%2015年=4.4%)と比べて大幅に低い。

また、申立後の審理状況に関しては、2016年6月末時点でのファーストアクションの実績として、下記のデータが示されている(出典2)。

  • 取消理由通知:71.2%
  • (ファーストアクションにて)維持決定:28.8%

その一方で、既報と同様にJ-PlatPat「審決速報」での検索結果を用いて算出した異議申立の取消率を、特許庁での無効審判の無効率(出典3)及び地方裁判所での侵害訴訟における権利無効による敗訴率(出典4)と比べると下表のとおりとなっている。

<取消率、無効率及び権利無効による敗訴率の比較>

特許異議申立の取消率
J-PlatPat「審決速報」2016年11月14日調べ:取消 20件、一部取消 7件、申立却下 4件、維持 163件)
13.9%
特許無効審判の無効率
(出典(4)より 2015年のデータ:請求成立(含一部成立)39件、請求不成立142件、取下・放棄34件)
18.1%
権利無効による敗訴率
(出典(5)より 2014年のデータ:権利無効による敗訴 11件、非侵害による敗訴 29件、両方 3件)
25.6%
※異議申立の取消率={(取消+一部取消)/ヒット件数}
※無効審判の無効率={請求成立(含一部成立)/(請求成立(含一部成立)+請求不成立(含却下)+取下・放棄)}
※権利無効による敗訴率={権利無効による敗訴/(権利無効による敗訴+非侵害による敗訴+両方)}

特許異議申立の取消率については上述の取消理由通知の割合との差が目立つが、特許権者による意見書及び訂正請求による対応に加えて、取消決定が出るようになってから日が浅いことも考慮すべきである。また、今回の分析では統計の時期にも違いがあるため、精緻な比較は十分なデータの蓄積を待った後にあらためて行う必要があると考えられる。

次回は、このようなファーストアクションの実績と取消率のギャップに着目して、審理経過(取消理由通知及び訂正請求の有無等)を考慮した決定、審理期間等に関する分析を紹介する。

【出典】(1),(2)及び(4)は日本特許庁、(3)は欧州特許庁、(5)は弊所
(1)「特許異議の申立ての状況、手続の留意点について」※2016年8月5日更新時
(2)「特許異議の申立ての件数が1000件を超えました」※2016年8月5日更新(現在は削除されている)
(3)「Annual Reports 2014及び2015」
(4)「特許行政年次報告書 2016年版
(5)「データから見る日本における特許侵害訴訟の現状

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