[特許/シンガポール]新たな審査加速プログラムSG Patents Fast
シンガポール知的財産庁(Intellectual Property Office of Singapore:IPOS)は、より早くオフィスアクションを受領できる新たな審査加速プログラム「SG Patents Fast」を2025年5月20日より開始することを公表した。当該プログラムは、2024年12月31日に終了した旧プログラムである「SG IP FASTパイロットプログラム」に代わるものであり、要件が簡素化されている。本稿では、SG Patents Fastの概要を紹介する。
1.最初のオフィスアクション受領までの加速
SG Patents Fastはまず審査請求時に申請する。適格基準は以下の表の通りである。
SG Patents Fastには加速ペースに応じた以下の2つのオプションがある。
①SG Patents Fast 4: SG Patents Fastの申請が認められてから4か月以内に最初のオフィスアクションを受領
②SG Patents Fast 8: SG Patents Fastの申請が認められてから8か月以内に最初のオフィスアクションを受領
上記2つのオプションに応じて加速手数料が異なる(以下の表参照)。なお、加速手数料は特許様式11及び12の申請手数料に加えて支払う必要がある。
参考までに、審査を加速するためのプログラムを利用しない場合、最初のオフィスアクションを受領するまでの期間は明らかではないが(出典4)、特許を得るまでには出願から2年~4年かかるようである(出典5)。また、旧プログラムを利用した場合には、早ければ6か月で登録されるとしていた(出典6)。
2.後続のオフィスアクション受領までの加速
SG Patents Fastの申請が認められた場合、特許様式13A(意見書への応答)による後続のオフィスアクションの加速の資格を得る。審査官の拒絶理由への応答の加速(特許様式13A)の申請に関する手数料はS $150である。申請が認められてから4か月以内に後続のオフィスアクションが発行される。
なお、後続のオフィスアクションの加速の申請については、上記表で示した申請の上限数(月5件)は適用されない。
3.留意点
加速手数料は見直しや変更の対象であり、もし変更がなされる場合はその前に公表されるとのことである。
[出典]
1.IPOS「Circular: New Patents and Trade Marks Acceleration Programmes」
2.IPOS「Circular No. 1/2025: New Patents and Trade Marks Acceleration Programmes」(PDF)
3.IPOS「Acceleration Programmes」
4.世界知的所有権機関(World Intellectual Property Organization :WIPO)「World Intellectual Property Indicators 2024」(PDF) P64~p66に示されている「 Patent office procedural data, 2023」には各国の最初のオフィスアクションを受領するまでの期間(First Office Action(months))が示されているが、シンガポールの当該項目は「-」(つまりN/A)となっている。
5.IPOS「How long does it take to obtain a patent in Singapore?」
6.IPOS「Extension of SG IP FAST Track Programme and Sunset of 12 Months File-to-Grant Programme (Circular No. 3/2022, dated 22 April 2022)」(PDF)
7.ジェトロ(日本貿易振興機構)「シンガポール‐技術・工業および知的財産権供与に関わる制度」
8.IPOS「Forms and Fees」
9.IPOS「Forms」
[参考]
新興国等知財情報データバンク「シンガポールにおける特許審査迅速化の方法」
新興国等知財情報データバンク「シンガポールにおける特許出願制度」