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[特許/米国、欧州、中国、韓国、カナダ、オーストラリア] 諸外国における拡大先願

日本特許法29条の2のいわゆる拡大先願とは、先願が出願公開等される前に後願が出願されても、先願の当初明細書等に記載された発明と同一発明については、後願は特許を受けることができない旨の規定である。この規定に対応する諸外国(米国、欧州、中国、韓国、カナダ、オーストラリア)における規定の比較を以下に示す。国ごとの規定の違い等を把握することは、拡大先願に関係する対応を検討する際に有用である。

1.拡大先願の規定
諸外国では、いわゆる拡大先願は、以下に示す部分に規定されている。

規定
米国 AIA102条(a)(2)
欧州 EPC54条(3)
中国 専利法22条2項、審査指南2部分3章2.2
韓国 特許法29条3項
カナダ 特許法 28.2(1)(c)及び(d)
オーストラリア 特許法 Schedule 1—Dictionary、審査基準 2.4.4.1A

 

2.出願人同一・発明者同一の場合の取扱い
出願人同一・発明者同一の場合の例外規定の有無を以下に示す。

出願人同一 発明者同一
米国 例外規定があり適用されない(AIA102(b)(2)(C)) 例外規定があり適用されない(AIA102(a)(2))
欧州 例外規定がなく、出願人同一の場合も適用される。 例外規定がなく、発明者同一の場合も適用される。
中国 例外規定が無く、出願人同一の場合も適用される。 例外規定なく、発明者同一の場合も適用される。
韓国 例外規定があり、出願人同一の場合は適用されない。(特許法29条3項) 例外規定があり、発明者同一の場合は適用されない。(特許法29条3項)
カナダ 特許法 28.2(1)(c)及び(d)の拡大先願に相当する規定は「異なる出願人」(prior art be filed by a person other than the applicant)による出願に関する規定であるため、出願人が同一の場合は適用されない。 カナダ特許法では「「出願人」とは,発明者,及び出願人又は発明者の法定代理人を含む。」とされているため、発明者同一の場合も適用されない。
オーストラリア 出願人同一に関する規定はなく、出願人同一の場合にも適用される。 発明者同一に関する規定はなく、発明者同一の場合にも適用される。

 

3.先願の開示事項と新規性・進歩性の判断
先願の開示事項が、新規性・進歩性の判断に利用されるのか否かを以下に示す。

新規性 進歩性
米国 判断材料とされる(AIA102(a)(2)) 判断材料とされる(AIA103(a))※1
欧州 判断材料とされる(EPC54条(3)) 判断材料とされない(EPC56条第2文)
中国 判断材料とされる(専利法22条2項、審査指南2部分3章2.2) 判断材料とされない(審査指南2部分4章2.1)
韓国 判断材料とされる(特許法29条3項) 判断材料とされない(進歩性について規定されている特許法29条2項には、後願の後に公開された先願について判断材料とされる旨は規定されていない)
カナダ 判断材料とされる(特許法 28.2(1)(c)及び(d)) 判断材料とされない(特許法 28.2(1)(c)及び(d))
オーストラリア 判断材料とされる(審査基準 2.4.4.1A、) 判断材料とされない(審査基準 2.5.1.4.1)

※1 米国では非自明性が、進歩性に相当する。

 

4.判断材料とされる先願の範囲
先願で開示されている内容のうち、どの範囲が判断材料とされるのかを以下に示す。

内容
米国 出願に記載されている内容(AIA102条(a)(2))
欧州 出願に記載されている内容(EPC54条(3))
中国 明細書等に記載された発明(審査指南2部分3章3.2.3)
韓国 明細書又は図面に記載された発明(特許法29条3項)
カナダ 出願の全ての内容(特許法 28.2(1)(c)及び(d))
オーストラリア 明細書に記載されている情報(特許法 Schedule 1—Dictionary)

 

5.先願が国際出願の場合における先願の国内移行の要否
先願が国際出願の場合、いわゆる拡大先願の規定が適用されるためには、先願が国内移行していることが必要かどうか、という点を以下に示す。

内容
米国 先願が国際出願の場合、米国を指定していれば、米国の国内段階に移行した出願である必要はない。
欧州 先願が国際出願の場合には、EPに移行した出願である必要がある(Case Law of the Boards of Appeal (2.4.4 PCT applications as state of the art))
中国 先願が国際出願の場合には、中国の国内段階に移行した出願である必要がある(審査指南2部分3章2.2)。
韓国 先願が国際出願の場合、韓国の国内段階に移行した出願である必要がある(特許法29条5項及び7項、201条4項)。
カナダ 先願が国際出願の場合には、カナダの国内段階に移行した出願である必要がある(特許規則163)。
オーストラリア 先願が国際出願の場合、オーストラリアが指定されていれば、オーストラリアの国内段階に移行した出願である必要は無い(PCT出願は完全出願として取り扱われ、完全出願について公開された情報が、新規性の判断とされる旨が記載されている)(特許法 Schedule 1—Dictionary、29A条)。

※本記事は、個別のアドバイスではない点、ご注意ください。

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