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[特許/米国]小規模団体・極小規模団体であると虚偽申告した場合における罰則を導入

米国特許商標庁(United States Patent and Trademark Office: USPTO)は、米国特許制度の健全性を担保するための取り組みの一環として、小規模団体又は極小規模団体のステータスであると虚偽申告した場合における罰則を導入する旨を公表した(出典1)。この罰則によれば、特許出願人がUSPTOに本来納付すべき金額(適切に納付しなかった金額)の少なくとも3倍の罰金を課すことができる。

■小規模団体及び極小規模団体
米国特許商標庁に米国特許出願(以下、特許出願)をする場合、特許出願人の規模(entity status:以下、団体ステータス)によっては手数料の減額が適用される。具体的には、多くの手数料は以下の通り減額される。

小規模団体(small entity):60%減額
極小規模団体(micro entity):80%減額

小規模団体でも極小規模団体でもない特許出願人は、大規模団体又は「減額が適用されない団体」と判断され、標準の手数料を納付しなければならない。

小規模団体及び極小規模団体の要件を説明する。要件を満たすと、団体ステータスは、小規模団体のステータス又は極小規模団体のステータスとなる。

小規模団体とは、以下の団体である(出典2)。

  • (1)個人、(2)関連会社を含む会社であって従業員数が500人以下、又は(3)大学を含む非営利団体
  • 小規模団体に該当しない団体に対して、本発明に対するいかなる権利も譲渡又はライセンス許諾していない(また、その義務もない)団体

極小規模団体は、通常、個人または少人数のグループであり、以下の要件を満たす(出典3)。

  • 過去に4件を超える特許出願(前の使用者に譲渡された特許出願を除く)において、発明者として指定されていないこと
  • 前暦年における米国の世帯収入の中央値として報告された金額の3倍未満の総所得であること
  • 非極小規模団体(当該団体が高等教育機関である場合を除く)に対して、当該発明に対するいかなる権利も譲渡またはライセンスしていない(また、その義務がない)こと
  • 上述した小規模団体の要件も満たすこと

■特許出願ごとに固有の団体ステータス
小規模団体及び極小規模団体は上述した特定の要件を満たす必要があるため、同一の特許出願人による特許出願であったとしても、どの団体ステータスに該当するのかは、特許出願ごとに異なる場合がある。例えば、ある特許出願が大規模団体に譲渡又はライセンスされた場合、たとえその特許出願自体は小規模団体又は極小規模団体に該当するような小さな会社によって行われたとしても、その特許出願に対して減額された手数料は適用されない。

■団体ステータスの変更および納付の是正
特許出願又は特許において小規模団体のステータスが一度確立されると、団体ステータスが変更された場合であっても、発行手数料又は維持手数料の納付期限が到来するまでは小規模団体の手数料が適用される。小規模団体のステータスの資格を失った場合(要件に該当しなくなり、団体ステータスが変更された場合)には、その資格を喪失した日以降、最初に到来する発行手数料又は維持手数料の納付時までに、USPTOにその旨を通知しなければならない。

極小規模団体については、特許出願人は、手数料の納付時に、極小規模団体のステータスに関する要件が引き続き満たされているか否かを確認しなければならない。特許出願人は、極小規模団体としての資格を失った場合にはUSPTOに通知しなければならず、必要に応じて、小規模団体の手数料又は減額されていない手数料を納付しなければならない。

団体ステータスの変更は、例えば、特許出願がライセンス契約の対象となった場合、または特許出願人が団体の規模を拡大して大規模団体とみなされるようになった場合に該当する可能性がある。

特許出願人が、USPTOを欺くことを意図せず、減額されるべきではないにも関わらず減額手数料で手数料を納付していたことに後から気付いた場合、遡及的に是正した手数料を納付することができる。

■団体ステータスの虚偽申告とUSPTOの罰則
特許出願人又は特許権者が小規模団体又は極小規模団体のステータスに基づく手数料により不当な利益を享受している場合、裁判所は、対応する特許は行使不能であると認定することができる。さらに、USPTOは、特許出願人又は特許権者が不当に減額された手数料を納付した場合、上述した通り、本来納付すべき金額の少なくとも3倍の罰金を課すことができる。

今回の公表(出典1)によると、USPTOは、係属中の特許出願又は特許が団体ステータスに関して虚偽申告を含んでいると暫定的に決定した場合、特許出願人に罰金を科すか否かを決定する前に特許出願人に通知し、特許出願人には申告が誠実に行われたことを示す機会が与えられる。

■コメント
特許出願人が小規模団体又は極小規模団体のステータスに該当するか否かについて疑義がある場合は、不適切に減額された手数料を納付するリスクを回避するため、当該特許出願に対して標準の手数料を納付することを推奨する。また、小規模団体又は極小規模団体のステータスを申告する特許出願人は、団体ステータスを積極的に見直し、必要に応じて、速やかに納付の是正を行うことを推奨する。

[出典]
1.USPTO「USPTO to assess statutory penalties for false assertions or certifications of small and micro entity status
2.USPTO「MPEP 509.02
3.USPTO「MPEP 509.04

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