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[特許/米国]査定不服審判の事前協議等へのPTAB審判官(APJ)の参加と実務上の留意点

 米国特許商標庁(USPTO)は、2026年9月10日、査定不服審判(ex parte appeal)の手続きにおける「審判請求前趣意書協議(Pre-Appeal Brief Conference)」および「審判協議(Appeal Conference)」に、特許審判部(PTAB)の行政特許審判官(APJ: Administrative Patent Judge)が参加可能となる新たな運用を発表した (出典1)。本運用はすでに開始されている。

 本変更は、近年の当事者系レビュー(IPR: Inter Partes Review)の減少に伴うPTABの余力を活用し、USPTO長官のSquires氏が推進する手続きの迅速化・効率化の一環として導入されたものと考えられる。

1.運用変更の概要
(1)審判請求前趣意書協議(Pre-Appeal)へのAPJ参加
 これまで、原則として担当審査官と管理職審査官(SPE: Supervisory Patent Examiner)の2名で行われていた本協議に、3人目のパネリストとしてAPJが追加で加わることが可能となった。協議結果通知には、参加したAPJの氏名が明記される。

(2)審判協議(Appeal Conference)へのAPJ参加
 審判請求趣意書(Appeal Brief)提出後に行われる審判協議において、従来参加していた3人目の審査官(協議者)に代わり、APJが参加可能となった。審査官答弁書(Examiner’s Answer)には、APJの氏名と役職が記載される。

※公平性を保つため、これらの協議に参加したAPJは、当該案件がPTABでの審理に移行した際、担当パネルから除外される。また、APJはあくまで審査官への「助言役」という位置づけとなる。

2.出願人にとってのメリットと戦略的活用法
(1)客観的なレビューによる早期権利化の期待
 APJは、PTABが実際にどのような拒絶を破棄しているかという「外部の視点」と「法的基準の正確な理解」を持っている。そのため、不当な拒絶理由(一応の拒絶理由の不備、KSR判決に基づく推論の欠如など)がPTABでの本格的な審理を待たずに協議段階で覆り、早期に許可に至る可能性がある。

(2)特に若手審査官(署名権限なし)の案件で有効
 これまで、若手審査官の案件における協議は、拒絶を承認した直属の上司(SPE)ら身内のみで行われがちであった。ここに利害関係のないAPJが加わることで、より客観的で率直な議論が期待される。

(3)審判請求前趣意書(Pre-Appeal Brief)の記載の工夫
 Pre-Appealは追加費用なしで5ページ以内の書面を提出できる有用な手続きである。今後はAPJが読むことを想定し、クレーム解釈の争いよりも、PTABが破棄しやすい「法的要件の欠如」や「証拠不十分」などを的確に指摘する構成にすることが効果的となる。

(4)今後の手続きの判断材料
 協議結果通知にAPJの氏名が記載されるため、Pre-Appealで「拒絶維持」とされた場合でも、APJが参加した上での結論であったかどうかが確認できる。これが、そのまま審判請求趣意書を提出して審判を続行するか、RCE(継続審査請求)等に切り替えるかを判断する重要な材料となる。

3.実務上の注意点
(1)特許期間調整(PTA)の「C遅延」は対象外
 協議にAPJが参加した結果、審査官が拒絶を撤回して特許査定や審査再開(Reopened prosecution)となった場合でも、これは「PTABによる審判の決定(破棄)」には該当しない。したがって、PTAにおけるいわゆるC遅延(審判による遅延)の加算は発生しない。医薬品など特許期間の長さが極めて重要な案件では、早期許可を受け入れるか、あえてPTABの決定まで進めるか、慎重な判断が求められる。

(2)期間限定のプログラムである可能性
 本運用は「追って通知があるまで有効」(This update to panels for pre-appeal and appeal conferences is effective until further notice.)とされており、PTABの業務量に余裕がある現在だからこそ実現している可能性がある。将来的にPTABの案件数が増加してPTABに余力がなくなれば、本運用が終了となる場合もありうる。

【出典】
*1:Official Gazette Notice: Update to Panels for Pre-Appeal and Appeal Conferences
https://www.uspto.gov/sites/default/files/documents/panels-update-sep2026.pdf

 

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