[特許/米国] 引用文献の有効出願日を仮出願日まで遡及させるための要件(Dental Monitoring v. Align事件)
2026年8月10日、CAFC(米国連邦巡回区控訴裁判所)は、AIA第102条(a)(2)に基づく引用文献(先願・後公開)について、当該引用文献の有効出願日を仮出願日まで遡及させるための要件について判決を下した(Dental Monitoring SAS v. Align Technology, Inc.)。
本判決においてCAFCは、引用文献が仮出願に基づく優先権主張の形式的な要件を満たすだけでは足りず、仮出願が引用文献の少なくとも1つのクレームに対して第112条(a)に基づく記載要件を満たしている必要があると判示した。
なお、当該判断は第102条(a)(2)に基づく引用文献(先願・後公開)に関するものであり、公衆利用可能日が基準となる第102条(a)(1)に基づく刊行物等に関するものではない。
(1)事件の背景とPTABの判断
本件は、Dental Monitoring社が所有する特許に対する当事者系レビュー(IPR)の控訴審である。IPRにおいて、引用文献(Carrier)の有効出願日を、AIA第102条(d)(2)に基づき仮出願日まで遡及できるかが争点となった。
AIA前においては、引用文献の「少なくとも1つのクレーム」が仮出願でサポートされていなければ遡及できないという判例(Dynamic Drinkware事件)が存在した。しかしPTAB(審判部)は、この判例はAIA後には適用されないと解釈した。そして、引用文献が優先権主張の形式的(ministerial)要件を満たしており、かつ仮出願が先行技術として依拠される対象事項を記載していれば、仮出願日まで遡及できると判断した。つまり、引用文献のクレームが仮出願でサポートされているかまでは問わないという判断であった。
(2)CAFCの判断
CAFCはPTABの判断を誤りとし、破棄差戻しとした。
CAFCは、第102条(d)(2)が「第119条に基づく優先権を主張する権利を有する」ことを条件としている点に着目した。第119条(e)(1)は、優先権主張の要件として、仮出願において第112条(a)に規定される方法で発明が開示されていることを求めている。
CAFCは、AIA第102条(d)(2)の下でも、Dynamic Drinkware事件で示された考え方と同様に、第119条(e)(1)を通じて第112条(a)の記載要件が必要であると判断した。すなわち、引用文献が先行技術として仮出願日の利益を享受するためには、仮出願の明細書が、公開された引用文献の「少なくとも1つのクレーム」に対して第112条(a)の記載要件を満たすサポートを提供していなければならないと結論付けた。
(3)まとめ
本判決により、AIA第102条(a)(2)に基づく引用文献の有効出願日を仮出願日まで遡及させるためには、先行技術として依拠する対象事項が仮出願に記載されていることに加え、仮出願が、公開された引用文献の少なくとも1つのクレームについて、第112条(a)の記載要件を満たすサポートを提供している必要があることが明確にされた。
【出典】
Dental Monitoring SAS v. Align Technology, Inc., Case: 25-1752 (Fed. Cir. Aug. 10, 2026)