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[不正競争・特許等/日本]不正競争防止法(ビッグデータ保護等)、特許法等(証拠収集手続)の平成30年改正について ~「限定提供データに係る不正競争の新設」及び「書類提出命令に係る手続の拡充」の施行期日は2019年7月1日~

既報のとおり、「不正競争防止法等の一部を改正する法律(平成30年5月30日法律第33号)」による改正事項のうち、「新規性喪失の例外期間を1年に延長(特許法、実用新案法、意匠法)」及び「商標登録出願の分割要件を強化」は、2018年6月9日に施行された。本稿では、他の改正事項から下記の1.~3.のほか、2018年11月1日に施行される不正競争防止法施行令について簡単に紹介する。

  1. [不正競争防止法]限定提供データに係る不正競争の新設(2019年7月1日施行)
  2. [不正競争防止法]技術的制限手段の効果を妨げる行為の範囲の見直し(2018年11月29日施行)
  3. [不正競争防止法、特許法等]書類提出命令に係る手続の拡充(2019年7月1日施行)
  4. 不正競争防止法施行令(2018年11月1日施行)

※1.~3.の施行日については出典(3)を参照、4.の施行日については出典(4)を参照

1.[不正競争防止法]限定提供データに係る不正競争の新設

データの不正使用に関する現行の法制度では、保護客体が限定的であったり、救済措置が十分ではないとの問題意識が契機となって、不正競争防止法に新設されることとなった。図1に示す通り、ID・パスワード等の技術的な管理を施して提供される「限定提供データ」を不正に取得、使用等する行為が新たな不正競争行為として規定され、これに対する差止請求権等の民事措置が創設される。

また、2017年12月からは不正競争防止に関するガイドライン素案策定WG(原則非公開)が開催されており、改正法施行までにガイドラインの策定・公表が予定されている(出典(1)での説明はこちら(PDF)、ガイドライン(指針)については【参考】の欄を参照)。

<図1:「限定提供データ」に係る不正競争行為に関する規定の概要>
図1_「限定提供データ」に係る不正競争行為に関する規定の概要※出典(1)の不正競争防止法改正概要資料(PDF)より引用

 改正不正競争防止法2条7項で定義される「限定提供データ」は、限定提供性、相当蓄積性、電磁的管理性を要件とし(出典(1)に含まれる改正法の条文はこちら(PDF))、いわゆるビッグデータを主な対象として想定している。また、図2に示す通り、この「限定提供データ」は他者との共有を前提にしている点で不正競争防止法2条6項の営業秘密とは異なり、創作性が問われない点で著作権法の著作物とも異なっている。

<図2:「限定提供データ」と「営業秘密」・「著作権」との比較>

図2_「限定提供データ」と「営業秘密」・「著作権」との比較※出典(1)の不正競争防止法改正概要資料(詳細版)(PDF)より引用

2.[不正競争防止法]技術的制限手段の効果を妨げる行為の範囲の見直し

暗号等のプロテクト技術の効果を妨げる行為に対する規制の強化を目的としており、「保護対象の追加」、「最新のプロテクト技術について明確化」及び「技術的制限手段の効果を妨げる行為の追加」に関する改正となっている(出典(1)での説明資料はこちら(PDF))。

3.[不正競争防止法、特許法等]書類提出命令に係る手続の拡充

不正競争防止法7条の規定が改正されることによるもので、同様の規定は特許法105条にも設けられる。また、特許法105条を準用する実用新案法、意匠法及び商標法においても同様の規定が整備される。この改正は、特許権の侵害訴訟等の裁判における証拠収集手続が適切に行われることを目的とし、下記の2点を内容とする(図3中の赤の枠囲み①及び赤字の下線箇所②参照)。

  • インカメラ手続を書類提出の必要性の判断にも利用できるようにする(従来は、提出を拒む正当理由の判断のみを対象としていた)
  • インカメラ手続への専門委員の関与を可能とする

<図3:書類提出命令に係る手続の拡充>

図3_書類提出命令に係る手続の拡充

これまでは、対象となる書類自体を見ることなく、申立書のみで必要性が判断されていたため、判断のための環境が十分ではないとの指摘があった。

※出典(1)の不正競争防止法改正概要資料(詳細版)(PDF)及び出典(2)(PDF)より引用

4.不正競争防止法施行令

1.~3.とは別に、不正競争防止法5条の2(営業秘密の使用に係る推定規定)の政令で定める行為に関する施行令が2018年11月1日に施行され、下記の措置が取られる(出典(4)の参考用資料での例示はこちら(PDF))。

(1)民事訴訟における営業秘密の使用に係る推定規定である不正競争防止法第5条の2に規定された2つの政令委任事項について、以下のとおり規定します。

  • 「政令で定める情報」は、情報の評価又は分析の方法であること。
  • 「政令で定める行為」は、情報の評価又は分析の方法を使用して評価し、又は分析する役務の提供であること。

(2)題名を「不正競争防止法施行令」に改めます。

出典(4)より引用

【出典】
(1)経済産業省「不正競争防止法のこれまでの改正について平成30年改正資料
(2)経済産業省 産業構造審議会 知的財産分科会 不正競争防止小委員会「データ利活用促進に向けた検討 中間報告
(3)経済産業省「「不正競争防止法等の一部を改正する法律」の施行のための関係政令が閣議決定されました
(4)経済産業省「「不正競争防止法第十八条第二項第三号の外国公務員等で政令で定める者を定める政令の一部を改正する政令」が閣議決定されました
(5)経済産業省「不正競争防止法

【参考:「限定提供データに関するガイドライン」等についての情報】
(1)e-Gov「パブリックコメント:限定提供データに関する指針(案)に対する意見公募について」※2018年12月21日まで実施
(2)経済産業省「第10回 産業構造審議会 知的財産分科会 不正競争防止小委員会」※開催資料に含まれている「限定提供データに関する指針(案)の概要」への直接アクセスはこちら(PDF)
(3)経済産業省「不正競争防止に関するガイドライン素案策定WG」※原則非公開のため、基本的に開催日と議事次第の情報のみ

追記1:その後、限定提供データに関する指針(PDF)とその概要版(PDF)は、同時期に意見募集が行われていた営業秘密管理指針の改訂版(PDF)とあわせて2019年1月23日付けにて経済産業省ウェブサイトの不正競争防止法のページで公表された。

追記2:2019年7月、限定提供データに係る不正行為に関する解説を含む不正競争防止法逐条解説の令和元年7月1日施行版(PDF)が経済産業省ウェブサイトの不正競争防止法のページで公表された。

 

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***更新情報(2018年11月29日)***
「限定提供データに関するガイドライン」についての情報を【参考】に追加

***更新情報(2018年12月20日)***
【関連記事】を追加、整理

***更新情報(2019年1月30日)***
本文の一部を変更
出典(5)を追加
限定提供データに関する指針、その概要版及び営業秘密管理指針の改訂版に関する情報を【参考】に追記

***更新情報(2019年4月5日)***
【関連記事】を追加

***更新情報(2019年7月25日)***
【参考】に不正競争防止法逐条解説の令和元年7月1日施行版に関する情報を追加

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