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[特許/ドイツ]統一特許裁判所(UPC)協定の批准に係る国内法を違憲とする2回目の違憲申立を却下、同法施行へ

ドイツ連邦憲法裁判所は、2021年7月9日、UPC協定の批准に係る国内法を違憲とする2回目の違憲申立(2件の仮差止申請)を却下した旨を公表した。この却下決定を受け、同法の施行に向けて再び動き出し、2021年8月12日付でドイツ連邦法律公報において同法が公布されたことで、2021年8月13日に同法がドイツにおいて施行された。

なお、UPC協定の批准に係る国内法に関しては、2017年に1回目の違憲申立が提起され、同法が議員の3分の2以上の賛成票をもってドイツ連邦議会で可決されたものではないとの理由で、2020年3月に違憲の判断が下されていた。これを受けて、ドイツ連邦議会は2020年11月に同法を議員の3分の2以上の賛成多数で改めて可決し、ドイツ連邦参議院も2020年12月に可決したところで、2回目の違憲申立が出されていた。

UPC協定の批准に係る国内法が施行されたことで、ドイツはいつでもUPC協定を批准できる状態になったものの、ドイツがEU理事会事務局に批准書を寄託するのはまだ先になりそうである。UPC協定の発効に向けて最終段階へ移行するためには、さらにUPC協定署名2か国が「UPC協定の暫定適用に関する議定書」に拘束されることに同意する必要があるためである。この議定書は、UPC協定の一部を早期に適用可能とするものであり、裁判官の採用やITシステムのテスト等の裁判所の実際の設置に関する最終的な決定事項を含んでいる。

ただし、「UPC協定の暫定適用に関する議定書」に関して少なくとも2か国が早期に同意する意思を示していることから、UPC協定の暫定適用が開始されるのはそれほど遠い話ではないと思われる。ドイツが批准書を寄託して4ヶ月後にUPC協定が発効する予定であるため、UPC協定の暫定適用が始まって統一特許裁判所の開所の目途が立った段階で、ドイツはUPC協定の批准書を寄託するものと推測されている。

なお、暫定適用の期間は、少なくとも6-8ヶ月は続くと予想されている。イギリスのEU離脱に伴う諸問題も、この暫定適用の期間に解決が図られる必要がある。統一特許裁判所の第一審裁判所における中央部の一つはロンドン(バイオ、製薬、化学)に設置される予定であったが、これをどのように解決するのかは注目されている。他の中央部であるミュンヘン(機械)とパリ(その他全般)に集約させる案、パリ(その他全般)のみに集約させる案、イタリアやオランダといったUPC協定署名国の一つに新しく中央部を設置する案などが議論されているが、UPC協定では想定されていなかった事態であるため、最終的には政治的に解決が図られるものと思われる。

UPC準備委員会が2021年8月18日に出した声明によれば、UPC協定の発効は、全てが円滑に進めば2022年中旬には実現されるのではと予測されている。

【出典】
ドイツ連邦憲法裁判所「Unsuccessful applications for preliminary injunction against the Agreement on a Unified Patent Court
UPC準備委員会「What the decision of the German Federal Constitutional Court means for the Unified Patent Court’s timeplan

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