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[特許/EP]毒入り優先権/毒入り分割に関する拡大審判部審決G1/15のその後 ~審査ガイドラインへの反映と最近の審決例~

欧州特許庁(EPO)拡大審判部が部分優先に関する問題(いわゆる「毒入り優先権(Poisonous Priority; Toxic Priority)」及び「毒入り分割(Poisonous Divisional; Toxic Divisional)」)を判断した事件G1/15については、2016年11月29日に指令(Order)が示され、詳細な理由を含む審決(Decision)が2017年2月1日付けで公表された。このG1/15での審決は、2017年11月に施行された審査ガイドラインの改訂において、下記のように反映された。

審査ガイドラインF-VI, 1.5での追加事項(参考訳)>
1.5 複数優先権(Multiple priorities)
(前略 ※改訂前に同じ)
G1/15によれば、1若しくは複数の包括的な表現又はその他の表現(包括的な「or」クレーム)により選択的な主 題(subject-matter)を網羅するクレームのための部分優先権の資格は否定されてはならない。ただし、当該選択的な主題が、最初に、直接、若しくは少なくとも暗示的に、明白に、かつ、実施可能な態様で優先権書類において開示されていた場合に限る。この点において、他の実体的な条件又は制限は適用されない。(※下線部は筆者が追加)
(後略 ※改訂前に同じ)

また、同審査ガイドラインF-VI, 2.2の同一発明(The same invention)においては、部分優先に関する審決例の1つであったT 1877/08の説明が削除された。

なお、EPOの審決データベースにおいて、”Cases citing this case number”の項目をG 1/15で検索すると、2017年1月24日時点で下記9件の審決がヒットする。

  1. T 260/14(2017年4月13日審決)
  2. T 1564/13(2017年5月19日審決)
  3. T 557/13(2017年7月28日審決)※G 1/15の差戻審
  4. T 1516/12(2017年7月27日審決)
  5. T 88/14(2017年8月1日審決)
  6. T 1519/15(2017年8月3日審決)
  7. T 1775/14(2017年9月28日審決)
  8. T 282/12(2017年11月9日審決)
  9. G 1/16(2017年12月18日審決)※ディスクレーマー(除くクレーム)に関する拡大審判部審決

これらのうち、T260/14(2017年4月13日審決)及びT1519/15(2017年8月3日審決)では、審決の理由において上記の審査ガイドラインF-VI, 1.5からの引用と同一の内容が示されている。

このように、いわゆる「毒入り優先権」・「毒入り分割」に対する懸念は解消されたと言えるが、複数の優先権を主張する際には、クレームが部分優先権の利益を得ることができるか否かの検討に際して、審査ガイドラインF-VI, 1.5のただし書きにある要件(囲み内の下線部)には引き続き十分に留意する必要がある。

【出典】
欧州特許庁「Guidelines for Examination in the European Patent Office
欧州特許庁「Search in the Board of Appeal decisions database

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