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[特許]米国連邦最高裁、特許侵害訴訟の裁判地を制限 ~パテント・トロールの活動にも影響か?~

TC Heartland LLC v. Kraft Foods Group Brands LLC (Supreme Court 2016) No. 16-341

2017年5月22日、米国連邦最高裁判所は、特許侵害訴訟を提起する裁判地(venue)が争点となっていた注目事件に対する判決を下した。

判決において最高裁は28 U.S.C. (Judiciary and Judicial Procedure)の関連規定及び従前の裁判例に検討を加えた上で、28 U.S.C. §1400条(b)項の規定に従って、原告は、下記(1)又は(2)のいずれかに対応する裁判管轄区(judicial district)において特許侵害訴訟を提起できるとして、原判決を破棄し、差し戻した。

  • (1)被告の住所地(where the defendant resides)
  • (2)被告が侵害行為を行い、かつ、正規で確立された営業所/事業所を有する地(where the defendant has committed acts of infringement and has a regular and established place of business)

本判決の趣旨は、米国企業(U.S. domestic corporation)を被告とする特許侵害訴訟に関して上記(1)における“reside”の解釈を判断した点にある。そのため、原告に有利とされてきたテキサス州東部地区とは何らの縁のない米国企業が被告となる訴訟に大きな影響を与えるであろうと現地では評価されている。

2015年10月~2016年9月に提起された特許訴訟5,080件のうち、テキサス州東部地区への提起は1,963件で全体の40%弱を占めているが、本判決の影響により、今後は、多くの米国企業が住所地としているデラウェア州地区のほか、ハイテク関連企業が多いカリフォルニア州北部地区等での提起が増加することが見込まれる。また、テキサス州東部地区は、NPE(Non-Practicing Entity;不実施事業体)、特にいわゆるパテント・トロールが好む裁判地としても知られてきたが、その活動に変化が出る可能性がある。

なお、本判決は、米国企業が被告となる特許侵害訴訟についての判断であるため、日本企業については米国現地法人が被告となる場合への影響は米国企業と同様であると考えられる。その一方で、本判決は日本にある本社が直接訴えられる場合についての判断を示していないことから、日本企業に及ぼす影響の全体像は現時点では定かではない。また、米国現地法人が被告となる場合についても、上記(2)の要件を満たす限りは、引き続き、テキサス州東部地区において訴訟を提起される可能性があることから、当面は、上記(2)の要件の解釈も含めて、今後の推移を見守る必要があると考えられる。

【参考】
米国連邦裁判所「Judicial Business 2016

***追記(2018年1月19日)***
下記(1)~(3)の統計データでは、TC Heartland最高裁判決の前後で提起件数の多い裁判地がテキサス州東部からデラウェア州にシフトしたことがわかる。また、2016年に続き2017年も提起件数は減少した。詳しくは、下記の関連記事参照。

(1)Lex Machina「Lex Machina Q4 2017 End of the Year Litigation Update
(2)Unified Patents「2017 Patent Dispute Report: Year in Review
(3)RPX「2017 in Review: A Year of Transition

【関連記事】
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