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「知財紛争処理システムの機能強化」に関する報告書が公表される ~「適切かつ公平な証拠収集手続の実現」については、今後の特許法改正に言及~

2016年5月に決定された「知的財産推進計画2016」を受けて、産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会は、特許制度・運用における今後の対応の在り方について審議を行ってきた。主要テーマの知財紛争処理システムの機能強化については、2017年2月24日の会合で報告書案が取りまとめられ、同日から3月17日まで意見募集が実施された。その後、3月30日に報告書が公表された。

我が国の知財紛争処理システムの機能強化に向けて」と題された報告書は、3つの取り組むべき施策について取りまとめがされており、そのうち、「適切かつ公平な証拠収集手続の実現」の総論では、公正・中立な第三者の技術専門家に秘密保持義務を課した上で証拠収集手続に関与できるようにする制度の導入等に向けた法改正が言及されている。これを含み、報告書で挙げられている事項は下記のとおりで、法改正が言及されている1.を除き、それぞれの総論では「引き続き慎重に検討を進めることが適当である」とされている。

  1. 適切かつ公平な証拠収集手続の実現
  2. ビジネスの実態やニーズを反映した適切な損害賠償額の実現
  3. 権利付与から紛争処理プロセスを通じての権利の安定性の向上
  4. 知的財産推進計画2016で今後取り組むべき施策とされたもの以外の検討事項

なお、あわせて公表された意見募集の結果では寄せられた意見に対する考え方が示されており、例えば上記3.の関連事項である次の3点については、ユーザーニーズの状況を注視しつつ、引き続き慎重に検討を行うとしている。

  • 特許庁における有効性確認手続について
  • 侵害訴訟における訂正審判請求等を要件としない訂正の再抗弁について
  • 侵害訴訟等において権利の有効性が推定されることを確認的に規定するための明らか要件の導入

その他、報告書案に含まれない論点についても考え方が示されており、次の2点については、知的財産戦略本部知財紛争処理システム検討委員会報告書「知財紛争処理システムの機能強化に向けた方向性について」の結論を踏まえて取りまとめたとある。

  • (上記1.の関連事項)ディスカバリー制度を含め当事者間における証拠の開示を義務付ける制度について:
    日本において積極的に導入を検討すべき状況にはないと考えられる旨、結論づけられている
  • (上記2.の関連事項)いわゆる懲罰的賠償制度を含む追加的賠償制度について:
    「現行の法体系における民事及び刑事に関する法体系の役割分担をそもそも見直す必要性が生ずることから、我が国の法体系全体も視野に入れて、多面的な検討が必要になると考えられる」と結論づけられている

今後は、法改正の言及があった「1. 適切かつ公平な証拠収集手続の実現」に含まれる事項のうち、具体的な検討が進められるとみられる次の3点に関する議論が注目される。

  • 公正・中立な第三者の技術専門家に秘密保持義務を課した上で、提訴後の証拠収集手続に関与できるようにする制度の導入について
  • 書類提出命令・検証物提示命令の要件である書類・検証物の提出の必要性を判断するためにインカメラ手続を利用することができるようにする制度の導入について
  • 訴え提起前の証拠収集手続について

【出典】
特許庁「我が国の知財紛争処理システムの機能強化に向けて-産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会-
首相官邸 知的財産戦略本部「知的財産推進計画2016(本体ポイント概要)」、検証・評価・企画委員会「知財紛争処理システム の機能強化に向けた方向性について(報告書本体参考資料)」

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