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[特許/EU、英国等]欧州単一特許及び統一特許裁判所の進捗状況(2018年2~7月) ~イギリスはEU離脱後も枠組みに残留する意向を表明も、2018年中の運用開始は困難?~

(※EU離脱交渉における知的財産分野の協定案等についての続報はこちら
(※イギリスのEU離脱延期についての続報はこちら

2018年7月現在、欧州単一特許制度の開始は、要件となっているドイツによる統一特許裁判所協定(UPC協定)の批准について、その合憲性を同国の連邦憲法裁判所がどのように判断するかが鍵となっている。しかしながら、2018年2月に連邦憲法裁判所の事件リストに事件番号2 BvR 739/17として当該案件が掲載された後、目立った動きは見受けられない。また、申立人と目されているStjerna氏のウェブサイトに掲載されている関連記事(最終更新は6月21日)においても、審理スケジュールの具体的な時期に関する言及は見受けられない。

したがって、2017年12月に欧州統一特許裁判所が「(運用開始前の)暫定適用のフェーズに6~8か月が必要」とコメントしていることとあわせて考えると、仮に、ドイツの連邦憲法裁判所がUPC協定への批准について憲法上の問題はないと早々に判断しても、実際の運用開始時期は2019年にずれ込む可能性が高い。

なお、ハンガリーでは、現行憲法下でUPC協定の批准は認められないとする決定を同国の憲法裁判所が6月26日に下した。ハンガリーでは、比較的頻繁に憲法の改正が行われている模様であるが、今回の決定により、UPC協定が発効し、欧州単一特許制度が開始されても、ハンガリーの参加は遅れることが予想される。

その一方で、4月26日にUPC協定に批准したイギリスは、7月12日に公表した白書(policy paper)において、EU離脱(ブレグジット)後も欧州単一特許制度の枠組みに残留する意向を表明した。この意向は、イギリス知的財産庁のウェブサイトにおけるブレグジット関連の記事「IP and BREXIT: The facts」の7月23日更新分でさっそく反映されている。

イギリスの枠組み残留については、7月初めに欧州特許庁の主催で開催された欧州単一特許制度に関するコンファレンスにおいて、解決策を望むユーザーの声が多かったことが報告されており、今後のEUとの交渉が、イギリスの意向だけでなく、ユーザーの声に沿った形で進展するかが注目される。

【出典】
ドイツ連邦憲法裁判所「Preview 2018 (in German)」※英語版ページに掲載されているリスト(ドイツ語)では、Second Senateの11番目に事件番号「2 BvR 739/17」が掲載されている(2018年8月中旬時点の掲載順)
Dr. Ingve Björn Stjerna, LL.M.「Constitutional complaint against UPCA ratification in Germany
欧州統一特許裁判所「Summing up and Looking Forward to 2018
ハンガリー憲法裁判所「According to the provisions in force of the fundamental law, the agreement on the Unified Patent Court cannot be published in Hungary
イギリス政府「Policy paper: The future relationship between the United Kingdom and the European Union
イギリス知的財産庁「IP and BREXIT: The facts
欧州特許庁「Europe gears up for the Unitary Patent

【参考】
ジェトロ・欧州知的財産ニュース「2018年7月13日 英国政府、Brexit問題に関する白書を公表(PDF)」
ジェトロ・欧州知的財産ニュース「2018年9月27日 英国政府、EU離脱協定の合意がなかった場合(「No Brexit Deal」)における知的財産関係のガイダンス文書を公表(PDF)」

ジェトロ・調査レポート「英国のEU離脱(ブレグジット)に向けた日本企業の留意点(2018年10月)」※レポート本文の「(8)知的財産権 」参照
ジェトロ・調査レポート「英国のEU離脱に関する法律・制度上のガイドブック(2018年10月)」※レポート本文の「Ⅶ 知的財産権に関する影響」参照

欧州理事会「Agreement on a Unified Patent Court」※統一特許裁判所協定(UPC協定)の批准状況を確認できる
欧州理事会「Protocol to the Agreement on a Unified Patent Court on provisional application (PPA)」※UPC協定の暫定適用に関する議定書(PPA)への署名、通知等の状況を確認できる

【関連記事】
季刊創英ヴォイス vol. 79 知財情報戦略室:欧州単一特許制度 ~制度が開始されるまでに知っておきたい基礎知識~(PDF) 2017-04-01

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***更新情報(2018年8月28日)***
2017年12月に欧州統一特許裁判所のウェブサイトで公表された記事を根拠として、欧州単一特許制度の開始時期の予測に関する言及を含む段落を追加

***更新情報(2018年10月4日、11月2日)***
【参考】に「合意なき離脱(No Brexit Deal)」となった場合における特許、意匠及び商標の取扱いに関するイギリス政府のガイダンス文書等に関する記事へのリンクを追加

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