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食品の用途発明等に関する3つの「特許・実用新案審査基準」改訂 ~2016年4月1日より運用開始~

特許庁により検討が進められていた下記の3つに関する「特許・実用新案審査基準」の改訂が、2016年2月10日から3月10日までの意見募集を経て、2016年4月1日より運用が開始された。

・食品の用途発明に関する審査基準改訂
・特許法条約への加入等を目的とした特許法等の法令改正に伴う審査基準改訂
・特許権の存続期間の延長に関する審査基準改訂

本稿では、これらのうち「食品の用途発明に関する審査基準改訂」を紹介する。

1. 旧審査基準における用途発明の取扱い
旧審査基準の第Ⅲ部第2章第4節3.1.2では、「用途発明とは、(i)ある物の未知の属性を発見し、(ii)この属性により、その物が新たな用途への使用に適することを見いだしたことに基づく発明をいう。」とされている。しかしながら、これまでは、「骨強化用ヨーグルト」を例示しつつ「通常、公知の食品と区別できるような新たな用途を提供することはない」 として、食品に関する用途発明は「請求項中に用途限定があるものの、請求項に係る発明が用途発明といえない場合」とされていた。

2. 食品の用途発明に関する審査基準改訂の意見募集までの経緯
日本では健康食品の市場規模が近年増大しており、食品の機能性に関する研究開発の成果について特許による保護を要望するユーザーニーズ等も考慮して、食品の用途発明に関する審査基準の点検が実施された。

点検及び改訂に関する審議は、2015年12月~2016年1月に開催された産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会の第7~8回審査基準専門委員会ワーキンググループ(WG)において行われた。具体的には、「(1)食品に関する発明の請求項に用途限定がある場合の発明の認定」、「(2)請求項の記載形式」及び「(3)進歩性、記載要件等の判断」が審議された。また、「請求項中に用途限定が付されていても、用途限定のないものとして解釈される植物・動物の発明」については具体例を交えた議論が行われた。

その結果、(1)については、用途限定が請求項に係る発明を特定するための意味を有するものとして認定することとされ、(2)ついては、食品以外の分野との整合性等を考慮した案が採用された。また、(3)については、「食品の用途発明としての新規性を有すると判断した上で、他分野と同様に、進歩性、記載要件等を適切に判断していくこととし、当該判断に関する事例を審査ハンドブックにおいて記載する。」との方向とされた。

特許・実用新案審査ハンドブックは2016年3月23日に公表され、進歩性、記載要件等の判断に関する事例のほか、動物及び植物の発明に関する具体例も記載された。したがって、実務においては、改訂後の審査基準とあわせて、審査ハンドブックを参照することが肝要になるものと考えられる。

食品の用途発明に関して、審査ハンドブックの「附属書A 「特許・実用新案審査基準」事例集」に追加された事例は以下の通りである。

  • 発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載要件(特許法第36条):事例45
  • 新規性(特許法第29条第1項):事例30~34
    ※事例30の補足説明として、動物及び植物の発明に関する具体例が示されている
  • 進歩性(特許法第29条第2項):事例21~25

3. 食品の用途発明に関する審査基準改訂について
今回の「食品の用途発明に関する審査基準改訂」は、旧審査基準の第Ⅲ部第2章第4節3.1.2及び3.1.3のみを対象としている。概要は以下の通りで、審査基準における改訂点そのものは少ない。

(1)「3.1.2 用途限定が付された物の発明を用途発明と解すべき場合の考え方」の改訂
旧審査基準での「骨強化用ヨーグルト」の例が下記の例と置き換えられ、その説明では、食品の用途発明に関して用途限定も含めて請求項に係る発明を認定する場合の考え方が示された。なお、例は食品組成物に関する請求項であるが、「食品組成物の下位概念である発酵乳製品やヨーグルトにも同様に適用される。」との説明がある。


[請求項1] 成分Aを有効成分とする二日酔い防止用食品組成物。
[請求項2] 前記食品組成物が発酵乳製品である、請求項1に記載の二日酔い防止用食品組成物。
[請求項3] 前記発酵乳製品がヨーグルトである、請求項2に記載の二日酔い防止用食品組成物。

(2)「3.1.2 3.1.1や3.1.2の考え方が適用されない、又は通常適用されない場合」の改訂
3.1.1 用途限定がある場合の一般的な考え方」及び「3.1.2 用途限定が付された物の発明を用途発明と解すべき場合の考え方」が適用されない、又は通常適用されない場合として、現行の「化合物及び微生物」に「動物及び植物」が追加された。

【出典】
いずれも特許庁
特許・実用新案審査基準改訂案に対する意見募集
産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会審査基準専門委員会WG第7~8回配布資料及び議事録
「食品の用途発明に関する審査基準」、「特許法条約への加入等を目的とした特許法等の法令改正に伴う審査基準」、「特許権の存続期間の延長登録出願に関する審査基準」の改訂について
「特許・実用新案審査ハンドブック」の改訂について

【参考】
福山 則明「食品の用途発明に関する審査基準の改訂」(特技懇 282号 2016.9.15)
平成27年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書用途発明の特許権の効力範囲を踏まえた食品の保護の在り方に関する調査研究(PDF:1,618KB)」(平成27年11月)※知的財産研究所作成の要約(知財研紀要 2016 Vol.25)はこちら

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