[商標/中国]中国登録商標の三年不使用取消請求に関する最新動向と対応策
2024年後半より、より、中国国家知識産権局(CNIPA)は、登録商標の三年不使用取消請求において、請求人に対する立証責任を強化している。2025年5月26日には、公式ガイドラインが更新され、請求人が提出すべき証拠や情報の具体的な内容が明確化された。
【背景・目的】
今回の運用強化は、悪意ある取消請求や手続き濫用の抑制、審査効率の向上を目的とする。従来は請求人側の負担が軽く、明らかに使用されている商標に対する取消請求や、ダミー名義による請求が多かった。
新ガイドラインは、請求人・商標権者双方の負担バランスを是正し、請求人側の立証責任を明確化した点に特徴がある。
【主な変更点・新要件】
1.初歩的調査証拠の充実
– 請求人は、従来の「商標+商標権者名」の検索結果に加え、商標権者の経営範囲、事業内容、企業の存続状況、指定商品・役務ごとの使用状況等、より広範な情報を提出する必要がある。
– 証拠例として、商標権者の公式ウェブサイト、ECプラットフォーム、SNSアカウント、業界専門サイトでの検索結果、市場調査報告、実地調査記録などが挙げられる。
– 検索結果は「商標権者名」「商標名」「商標名+指定商品・役務名」など複数のキーワードで行い、検索結果のスクリーンショット(3~5ページ分)を提出することが推奨されている。
2.請求人の身元・請求の意図の開示
– 請求人が複数の取消請求を行う場合や、悪意ある取消請求が疑われる場合には、請求人の身元情報や請求の目的、関連する商標出願・拒絶案件の開示が求められることがある。
– 請求人及び代理人は、虚偽資料の提出や重要事実の隠蔽が信用失墜行為に該当することを認識し、誠実信用原則に従う旨の承諾が必要である。
3.実地調査の重視
– オンライン検索で使用痕跡が確認される場合や、過去に複数回の取消審判で維持された商標については、実地調査証拠の提出が求められる場合がある。
【実務上の対応】
請求人は、取消請求前に十分な事前調査を行い、ネット検索や市場調査、実地調査など多角的な証拠を準備する必要がある。証拠の網羅性・正確性が不十分な場合、補正指令や請求自体の却下リスクが高まる。
商標権者は、広告・取引書類・ウェブサイト・SNS等を活用し、日常的に多様な使用証拠を収集・保存しておくことが重要である。特にオンラインでの商標使用実績を積極的に発信し、証拠化しておくことが推奨される。
改正により、正規人側の請求のコストや負担が増加している。一方、商標権者は不使用取消請求を受けないよう、登録商標の使用実態を自ら積極的に開示・立証する姿勢が一層求められる。
出典:https://sbj.cnipa.gov.cn/sbj/sbsq/sqzn/202303/t20230330_26201.html