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[特許/メキシコ]連邦産業財産権保護法の改正

2026年4月3日、メキシコ連邦政府により、メキシコの連邦産業財産権保護法(Ley Federal de Protección a la Propiedad Industrial:以下、LFPPI)の改正が公布された。当該改正は翌日の2026年4月4日から施行された。本改正は、米国・メキシコ・カナダ協定(United States-Mexico-Canada Agreement:以下、USMCA)の見直しを視野に入れた包括的な改正であり、以下に挙げる内容等を目的としている。

  • 技術移転の促進
  • 特許・商標などの保護手続の簡素化・迅速化
  • メキシコ産業財産庁(Instituto Mexicano de la Propiedad Industrial:IMPI)の機能強化と国際基準との整合

本改正の要点を示す。

1.優先権の回復に関する規定の追加 LFPPI第42
優先期間満了後(特許・実用新案:12か月、意匠:6か月)であっても、2か月以内であれば優先権の回復を請求することができるとの規定が追加された。ただし、優先権の回復が認められるかどうかの判断基準については、本稿執筆時点(2026年4月)では明確ではない。

2.仮出願制度の導入 LFPPI第105 Bis
出願人(または発明者)の特定と発明の説明といった簡易な要件で、早期の出願日の確保を可能とする仮出願制度が導入された。留意点は以下の通りである。

  • 仮出願後12か月以内に本出願を行う必要がある(延長不可)。期間内に本出願を行わない場合には、仮出願を基礎として出願日を主張する権利を放棄したものとして扱われる。
  • 米国における仮出願と異なり、国際的な優先権を生じないため、パリ条約に基づく優先権主張の基礎とはならず、メキシコ国内における出願日の確保にとどまる。
  • 公開や実体審査の対象にはならない。

3.優先権書類の補完規定の追加 LFPPI第106
優先権を主張する場合には、出願日から3か月以内に優先権主張の基礎となる出願の認証写しを提出するとともに、必要に応じてそのスペイン語訳を添付する必要があるという原則は、従来も改正後も変わらない。しかし、改正前後ではIMPIが当該書類の欠落または不備を認めた場合の扱いが異なり、改正後は補完が認められ得る。ただし、5営業日以内に補完しなければならないため、期間としてはかなりタイトである点に留意する必要がある。

改正前:
優先権は主張されなかったものとみなされる。
改正後:
IMPIは、3か月の期間の満了時に出願人に対し、その後の5営業日以内に該当する書類を提出するよう指令することができる。当該期間内に当該指令に従わない場合、優先権は主張されなかったものとみなされる。

4.手続権利回復規定の追加 LFPPI第113 Bis
LFPPI第106条(方式不備)、第110条(登録料未納)および第111条(拒絶理由への無応答)に定める手続において期限徒過があった場合であっても、当該手続に係る権利の回復を請求することができる旨の規定が追加された。

当該請求の要件は以下の通りである。

  • 請求は、遵守されなかった期間の満了日の翌営業日から起算して15営業日以内
  • 所定の手数料の納付
  • 請求の提出時点において、LFPPI第106条、第110条および第111条に基づく未履行の手続を補完していること

IMPIは状況に応じて手続の続行を決定するとされている。したがって、手続が続行されるかどうかの判断は裁量に委ねられていると考えられる。

5.審査期間に関する規定の追加 LFPPI第111 Bis
特許、実用新案および意匠の権利の付与または拒絶について最終的な決定(査定)を下すための期間は、出願の実体審査が開始された日から起算して1年を超えてはならないとの規定が追加された。

6.審査遅延に対する申請規定の追加 LFPPI第327 Bis~327 Quater
上記5で説明した期間内に最終的な決定がなされない場合に、出願人が早期に最終的な決定を出すよう求める義務的決定発出手続(procedimiento de resolución obligatoria)を申請できるとの規定が追加された。当該申請は、IMPI内に設立された審査介入機能を有する専門技術委員会に付託される。当該専門技術委員会は議決権を持つ3名以上で構成される。以下に流れを示す。

出願人がIMPIに対して義務的決定発出手続を申請する。

申請が専門技術委員会に付託される。

専門技術委員会は担当審査官に審査状況の報告を求める。

報告に基づき、正当な理由なく法定の審査期間を超過していると専門技術委員会が判断した場合、審査官に対して10営業日以内に特許査定などの最終的な決定を出すよう求める。審査官がこれに適切に対応しない場合には、行政上の責任追及の対象となり得る。

7.医薬品の存続期間延長制度の導入 LFPPI第136 Bis
医薬品の製造販売承認の付与における不合理な遅延に対して、特許期間の補償を行う制度(医薬品の存続期間延長制度)が導入された。当該制度は以下の流れで行われる。

メキシコ連邦衛生リスク対策委員会(以下、衛生当局)が以下を行う。
・延長期間(5年を超えることはできない)を決定
・IMPIに対し存続期間を調整するための補充的証明書の発行を要請

IMPIは、特許権者に対して以下を行う。
・衛生当局が示した内容を通知
・1か月の期間内に、補充的証明書の発行に係る所定の手数料の納付および延長期間に係る年金等の支払いを要求

①        特許権者がIMPIの要求を履行した場合
IMPIは、特許権者に対して補充的証明書を発行し、公式な承認として新たな存続期間を明記し、公報に公告する。なお、以下に留意する必要がある。
・補充的証明書(による延長期間)は5年を超えることはできない。
・効力は基礎となる特許の存続期間が満了した翌日から生じる。
・存続期間の延長は特許が有効に存続していることが条件である。
②        特許権者がIMPIの要求を履行しなかった場合
存続期間の調整は放棄されたものとみなされる。

当該制度の導入は、USMCA第20.46条の「医薬品の製造販売承認手続により存続期間が実質的に短縮された場合、各国は特許の存続期間の調整をするべき」との規定への対応と考えられる。しかしながら、現地代理人は、遅延の定義、算定方法、対象範囲、どの時点の案件からこの制度を適用するのかが不明確であり、まだ十分に機能しない制度であるとの見方を示している。そのため、規則やIMPIの運用指針等による詳細なルールの整備が待たれる。

[出典]
連邦官報「No. de publicación: 080/2026 Ciudad de México, viernes 3 de abril de 2026」(PDF) ※IMPIの連邦官報のリンク先が不安定のため、該当の連邦官報のPDFをミラーリングしたサイト
メキシコ連邦政府「México fortalece su sistema de PI con la reforma a la Ley Federal de Protección a la Propiedad Industrial rumbo a la revisión del T-MEC
ジェトロ「産業財産権保護法の改正を公布、USMCAなど国際基準に対応(メキシコ)

[参考]
弊所対外サイト「[特許・実用新案/メキシコ]オフィスアクション発行回数及びオンライン面談に関する改正

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