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[商標/中国]商標権侵害訴訟において懲罰的賠償を明確に認めた一審判決

●本事件の概要
2019年9月に中国上海の地方人民法院により商標権侵害訴訟において3倍の懲罰的賠償(商標法第63条第1項)を明確に認めた一審判決が出された。本事件では、第17787572号(以下、572商標)の商標権者である米国のBalanced Body社は、中国浙江省の永康一恋社の、572商標の指定商品に含まれるピラティス補助器具への無許可且つ繰り返しの使用行為は、悪意による商標権の侵害に当たるため、侵害行為の停止及び侵害により獲得した利益(以下、獲得利益)の3倍の懲罰的賠償(300万元≒4,700万円)を求め、上海の地方人民法院である浦東新区人民法院に提訴した。
CN-20200220

●懲罰的賠償について
2013年の第3回商標法改正により、「商標権が悪意により侵害され、情状が深刻な場合には、規定された算定方法(① 商標権者の損失 → ② ①が認定困難なら獲得利益 → ③ ②が認定困難ならライセンス料の倍数を参酌)により決定した金額の最大3倍で損害賠償額を決定することができる。」という規定が新たに設けられた。この規定は、中国知財法規における初の懲罰的賠償規定とも言われている。なお、2019年の第4回商標法改正で、同規定の「3倍」が「5倍」に引き上げられている。

●コメント
本事件について、多くの中国及び日本のメディアは「上海初の知的財産権侵害懲罰的賠償事件」のような見出しで報じているが、本事件より前にも懲罰的賠償を認めた世好事件((2016)沪0107民初1967号判決書)等があるため、必ずしも「上海初」とは言えないと考える。本事件では、従来よく使われていた「情状酌量の上での算出」ではなく、「算定方法を明確に示した上で、原告の賠償請求額を全額認めた」という意味で上海初の事件と言えると考える。

また、懲 罰 的 賠 償を認めた事 件としては、832万 元(≒1億3,000万円)の賠償額を判決したFILA事件((2017)京73民終1991号判決書)も有名である。上述した第4回商標法改正が施行されており、専利法でも懲罰的賠償規定が設けられる予定であるため、これらの事件に対する判断は、今後の参考になると考える。

【出典】
中国裁判文书网「中华人民共和国上海浦东新区人民法院民事判决书(2018) 沪0115民初53351号」等

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